2016/04/21

【学問のミカタ】春をつかまえる

大学付近の野川(撮影:佐々木裕一)

新年度最初の学部共通テーマは「春」です。

三省堂の国語辞典に、「春」はこんな風に書かれています。

 春 (1)四季の一. *3~5月,旧暦で1~3月.||(ア)勢いの盛んな時期.(イ)色け.色情.(2)正月.新春.

他の季節はどうでしょうか。

 夏 四季の一.*6~8月,旧暦で4~6月
 秋 四季の一.*9~11月,旧暦で7~9月./物事の終わりにたとえられる.
 冬 四季の一.*12~2月,旧暦で10~12月.|| 厳しい時期.

夏を除くと、どの季節にも、暦以外の意味があります。なかでも、もっとも意味の多いのが「春」です。

さて、四季には、辞書に書かれている意味に加え、それぞれ一定のイメージがあります。

心理学では、イメージを調べる際、SD法を用います。

SDとは、Semantic Differentialの略です。直訳すると、意味の差、つまり絶対的意味よりも相対的意味に注目する方法です。心理学者のオズグッド(Osgood, C.)が1950年代後半、考案しました。

SD法では、一般に形容詞で「意味」をとらえます。たとえば、明るい−暗い、やわらかい−かたい、暖かい−冷たい、といったように形容詞を「対」で用います。

形容詞という同じ土俵に乗せれば、異質な物同士も比較できるようになります。回答は通常、段階尺度(リッカート尺度と言います)で答えます。7段階の例ではこうなります(もっとも近いものに○をする)

(明るい)1 非常に−2 かなり−3 やや−4 どちらでもない−5 やや−6 かなり−7 非常に(暗い)

実際には、以下のように聞きます。

「春」というコンセプトを、明るい−暗い、という軸で考えると、7段階のどこに位置するか答えてもらいます。他の形容詞についても同様です。つぎに、「夏」に対して各形容詞について同様に答えてもらい、秋、冬と行います。

回答から形容詞ごとの平均値をコンセプト別に求め、その値でコンセプトの特徴をとらえ、コンセプト間を比較します。
ところで「春」で画像検索をすると、桜の画像がたくさん出てきます。こういう方法でも、ことばのイメージは調べられそうです。さて、「夏」「秋」「冬」はどうでしょう。
SD法について詳しく知りたい向きには、市原茂さんが2009年に書かれた「セマンティック・ディファレンシャル法(SD法)の可能性と今後の課題」をお勧めします。

川浦康至

【学問のミカタ】
 「経済と経営って、どう違うの?」「コミュニケーション学部や現代法学部って何を学ぶの?」「教養ってどんな授業をするの?」
 そんな疑問を持った高校生に送る企画です。
 このシリーズでは、教員いわば学問の強い味方が、その学問分野でのとらえ方(学問の見方)を紹介していきます。同じテーマでも、学問分野が違うと視点も変わります。
 【学問のミカタ】で、その一端をお伝えします。
 記事は、毎月1回、共通テーマで書かれます。今月は「春」。

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