本年度新しく着任された田村和人先生に、新聞を活用した一年生向け授業についてご紹介いただきました。
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NIE(Newspaper in Education)とは学校など教育現場での新聞活用のことです。アメリカでは1930年代に始まったそうですが、日本では1985年の新聞大会で提唱され、以後、全国の学校(小学校から大学まで)で展開されています。
さて、筆者は「フレッシャーズ・セミナーa」という授業を2コマ担当し、計25名の学生が履修しています。この授業は新入生の必修科目で、充実した大学生活を送るための知識や技能を養うことを目的としています。そして、5月と6月に、この授業でそれぞれ2回のNIEを実施しました。
講師には読売新聞東京本社教育ネットワーク事務局アドバイザーの秋山純子さんをお迎えしました。秋山さんは中学校教諭を長く勤めた国語の先生で、校長まで経験した、まさに教育の達人です。(新米教師の私としては、その指導スキルにも学ぶところが多くありました。)
さて、NIEの授業の目的は、大きく以下の三点と考えます。
(1)新聞になじむ
現代人の活字離れはかなり深刻です。書籍はもちろんですが、「新聞離れ」も同様です。つい10年ほど前までは電車内を見渡すとかなりの数の人が新聞を読んでいたものでしたが、今ではひとりもいないことがよくあります。
このことはゼミ生でも同様で、「新聞を読んだことがない」という、ちょっと驚くべき声が少なからず聞こえました。理由を聞くと、「文字がたくさん並んでいてむずかしそう」と言います。「活字離れ」「新聞離れ」の人たちに一定の強制力をもって新聞を試してもらうことがNIEのポイントのひとつだと思います。
授業では、気になった記事、広告、報道写真を「スクラップシート」に貼ってもらい、要約や意見を記入してもらいましたが、「読んでみたら思いのほか読みやすかった」「おもしろかった」との感想が多く聞かれました。どうやら“食わず嫌い”は克服してくれたようです。
(2)新聞を情報源のひとつにする
新聞を必要としない理由として、「テレビニュースをみている」とか「ネットでみている」という声が多いのですが、テレビニュースと新聞ではニュース項目数に大差があり、また、ネットでは自分の興味がある分野のニュースにしか接しない傾向があります。新聞を上手に活用して、大切な情報源としてもらえればと思います。データベースも利用しながら、新聞を有効活用してもらうきっかけにすることがNIEの目的のひとつでしょう。
(3)新聞を読む力をつける
「まわしよみ新聞」という作業を通じて、記事と記事の関連性を考えました。これは4名ほどのグループで、メンバーが選んだ記事の中からトップ3を選んだ上で、三本の記事に共通する「見出し」をつけるものです。まったく違うジャンルの記事どうしでも、どこかに共通する点があることを教えてくれ、新聞の読み方、ひいては新聞を読む力をつける訓練となっています。
インターネットが普及した現在でも、広範な取材対象をカバーし、多くの目でもってスクリーニングされた情報を提供してくれる一次情報源はそれほど増えているわけではありません。その意味では新聞という大切な社会の財産を、若い人たちにも上手に活用してもらえればと願っています。その点で、NIEは大変有効と感じました。来年度以降もぜひ継続したいと考えています。
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