2020/05/31

「きょうもトケコム」から「TOKECOM note」へ

いつも東京経済大学コミュニケーション学部ブログ「きょうもトケコム」を見ていただいてありがとうございます。開設は2012年7月5日、それ以来およそ8年間にこの記事を入れて442記事を投稿し、学部の現在をお伝えしてきました。

明日、2020年6月1日からこのブログは、コンテンツ配信サイト note 上で、


として続きます。引き続き、学部の中の講義・ゼミの様子、学生と教員、そして卒業生の動きを積極的にお伝えしていきたいと思います。6月1日には早速、「ここまでコミするオンライン授業」シリーズの第2回、録画配信型(B型)の授業の裏側をお伝えする予定です。

これからもどうぞよろしくお願いします。

(追記)TOKECOMは2022年度からメディア社会学科と国際コミュニケーション学科の2学科体制となる予定です。詳しくはこちらの特設Webページをご覧ください。


※このブログも記録用として残し、またTOKECOM noteの更新記事をしばらく転載する予定です。

2020/05/21

トケコム就職状況 その2...「質」の話

前回はトケコムの就職「率」について書き、最後に就職「質」ということは考えられないのでしょうか? という問題提起をしました。約束通り書きましょう。

「質」であっても人は数字で測りたがります。だから「優良企業400社への就職率」(大きくて古い会社が400社には多い)というように率で質を測ろうとする試みもあります。これについては東経大は10%に届きません。

ガッカリしました? いえ、大丈夫です。この数字が25%を超える大学は数えるほどしかありませんし、そういう大学でもこの10年で率は下がってきています。なにしろ会社の数は多く、しかも増えているからです。さらに成長性のある、あるいは社会的に意義を持つ新しい小さな会社に優秀な学生が就職するようになっているからです。優秀な学生は時代の変化を感じているのでしょう。



私が学生によく話す「質」にかかわる要素は以下のようなもの。もちろん、絶対というわけではないですよ。

マクロ的な要素
・業界として成長する可能性が高いか
企業やビジネスから「金儲け」を想像する人は多いですが、企業が存在しているのは彼らが提供する価値が社会的に認められているからです。だとすれば成長する業界というのはこの先、提供価値がさらに社会的に認められていくということになります。さらに、仮に自分の入った会社がつぶれても転職できる会社が多くあることにもなります。

ミクロ的な要素
・その会社に技術的、あるいは他の強みがあるか
・経営者がしっかりしているか
・自分の得意なことが活かせるか
メーカーであれば独自技術は大事です。利益率が高くなり、給与も概して高くなり、落ち着いて仕事ができます。経営が火の車という会社では、あわてて転職して失敗することもあります。また「得意」と「好き」は違います。好きなことでも苦手なことを仕事にするのは一考を要します。でもこのミクロ的な要素は実際に入社してみないとわからないことも多いです。

自分と会社の相性/働く意味
・会社のミッション(使命)に共感できるか
これは小さな会社、若い会社であればことさら重要です。多少ツライことがあっても自分と会社のやっていることに誇りが持てれば人は頑張れます。

こういうことを学生時代から考えて準備する人が増えていけば、トケコムの就職「質」は今以上に高まっていくでしょう。

と、書いてきましたが、学生には実感がもてないでしょうから、具体例を。

我がゼミを2年前に卒業して3年目に入った竹野谷淳さんからの寄稿です。彼が入社したのは株式会社ウェイブ。マンガコンテンツをデジタルで作っている会社です。
http://wwwave.jp

彼から「ここに行こうと思っている」と言われたときに、話して、少しだけ調べたのですが、私は次のようなことを言いました。「マンガのデジタル版はアジア市場を中心に伸びる可能性が高い」「創業から8年たっていて取引先もちゃんとしているし、経営者が良さそうだ」「マンガやアニメが好きで、書くことが得意なあなたには合っているのではないか」。そしてこれは質の高い就職だと思ったことを覚えています。当時は50人に満たない会社だったのですが、彼が会社のミッションに共感していたこともわかります。

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 新型コロナウィルスの影響が広まる今日この頃、私は社会人3年目に突入して初めての在宅勤務を経験してます。そんな中、私は新卒から勤め続けている株式会社ウェイブで編集者をしています。
 
 なぜ多くの企業からウェイブを選んだのかと言うと、企業理念「社員が定年まで成長し続ける会社」に象徴されるように、何よりも社員の成長を促進する環境作りを大事にしているからです。社員の成長は、ウェイブを2年ほどで社員数50人弱から100人を越える企業へ成長させた一因だと思います。就職先の将来性を考える際、その会社が社員の成長をどのように考えているかは、企業選びにおいて大事な要因の1つになります。
 
 では、ウェイブに就職するまでに何をしていたのかと言うと、まずはひたすら説明会や座談会に足を運びました。事前に得られる情報は限られているので、現場で働いている人の声を聞くために大手を含め幾つもの企業を回りました。この期間までに~をする!と目標を立て、達成するためにスケジュールを調整し就職する業界の比較材料を集めます。
 
 とはいえ、当時は売り手市場。そこまでしなくとも、『とりあえずの就職』は何とかなりました。目標無く惰性で就職先を決めたり、他社との比較無しに決めたりする学生も多く見ました。ただ、私個人としては本当にそれでいいのか、と思うところがありました。

 就職をするにあたって、「就職先で自分が得られるものはあるか」「得たスキルは、キャリアアップに生かせるか」「そもそも働き続ける上で、会社の方針が自分にあっているのか」など、先々を見越していく必要があると、私は強く思います。
 
 今は新型コロナウィルスの影響で就活自体も本当に大変な時期ではありますが、だからこそより就職した後のことを見据え、数年後自分は何をしているか?を問いながら、選んでもらえればと思います。

 卒業生として、皆様のご活躍を心より応援しています。
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世の中は複雑になり、変化も速い。だからこそ『業界地図』をペラペラめくりながら「こんな仕事や業界があるのかぁ」という準備はとても良いと思います。授業にだって『職業選択とキャリア形成』『企業・業界分析』『雇用の変化とキャリア形成』などがキャリア科目(進一層科目)として準備されています。

それとここまで一言も書いていないですけど「考える訓練」もとてつもなく大事です。会社は言われたことができるだけの人よりも、新しいアイディアを出せる人の方が欲しいのですから。そこが抜けてもダメ。トケコムの場合、そこはほとんどの学生が所属するゼミで鍛えることができ、それをやった人は結果的に良質な就職をすることが多いです。

まとめると就職「質」というのは学生個々で持つ基準によって違う。だから測るのは難しい。けれども準備によって、また大人と話すことで上げることはできます。考えながら少しずつ準備を始める学生が増えれば、トケコム全体の就職「質」はまだまだ上がるでしょう。これが私の考えですし、希望です。

2020/05/15

トケコム就職状況 その1...「率」の話

コロナ禍終息にはまだ少し時間がかかりそうです。それでも大学では授業が始まり、みなさんは学生としての生活感覚が少し戻ってきたかもしれません。だったらもう少し先の話をしてみましょう。そう、学生の多くが近い将来に直面する就職の話。就職委員という立場で今回は佐々木が書きますね。

2019年度のデータが揃いました。大学全体での「卒業生」就職率は87.4%。これは就職決定者数を卒業生数で割った数字です。昨年と0.3ポイント減少とほとんどかわりません。これとは別に就職を希望した学生数で割った「希望者」就職率は96.7%でした。こちらは前年から0.8ポイント増。

ではトケコムはというと、
・卒業生就職率:86.4%
・希望者就職率:98.5%
大きな差はありませんが、希望者就職率は4学部で見ると最も高いのは事実。

男女で見ると、それぞれの就職率は
・男子 86.9%、98.9%
・女子 86.0%、98.0%
となりました。



では、この数字をどう解釈したら良いのでしょうか。ある人は「希望すれば100%近く就職できるのだな」と思うでしょう。それは正しい。

でも一言言いたいです。100%近く入れるのは「選り好みしなければ」ということです。

仮に希望者就職率が100%であっても一定数は「大して行きたくもない会社」に入ります。また本人の満足度が高かったとしても、すぐれたビジネス感覚のある大人がみれば「冴えない会社」に入る学生がいるのも事実です。そしてこれはトケコムや東経大に限った話ではありません。どんな大学に通っていても、無知で準備不足の学生はそのような良くない選択をするのです。

さてちょっと話題を変えてみましょう。

毎年発表される「東大合格者数ランキング」なるものがあります。このランキング、実は10年でけっこうな変化があります。なぜでしょうか。それは「東大合格者数ランキング」がわかりやすくてけっこう多くの人が関心を寄せる指標だからです。だから多くの高校は東大に合格させるためにあの手この手を考えます。そうして受験者と入学者を確保します。

わかりやすいのは「文武分担」と時に揶揄されるもの。スポーツで全国大会を目指す生徒と、東大合格をひたすら手伝う「特進クラス」の生徒を別にしてそれぞれで学校の知名度を上げようというケースです。

東大なんて関係ないよ、という読者もいるかもしれません。でも人びとのランキング好きという性質から、このようなランキングは東大以外にも、早慶、MARCH...と次々と増えていき、高校の先生たちの一定数はそれを意識せざるをえないわけです。

こういう非常にわかりやすい指標があると、10年でけっこうな変化が起きます。なぜならば人びとが対策をとり、行動レベルで変化するからです。でも高校のランクほど、大学のランクは短時間で変わらないですよね。それは「東大合格者数ランキング」と似たわかりやすい決定的なランキングが大学と就職の世界にはないからです。偏差値? それは大学に入る時点でのランキングです。東大入学は高校を出たあとの話ですから。

大学の出口である就職への強さに「××会社への就職数」という個別の会社への就職数はほとんど関係ない。出しても大して意味がないから話題にもなりません。会社はあまりに多様ですし、新陳代謝も激しいので。日本の大学数は700強しかありませんが、会社の数は400万!!以上あり、会社の寿命は平均24年ほどですから。だからどこの大学も「卒業生就職率」と「希望者就職率」しか出しようがないのです。

では就職「率」だけではなく就職「質」ということは考えられないのでしょうか? これはトケコムがどのくらい就職に強いのかを考えることでもあります。

次の記事ではそのことについて考えてみたいと思います。

2020/05/09

【ここまでコミするオンライン授業】第1回   A型:メディアコミュニケーション基礎


 こんにちは。コミュニケーション学部の山下玲子です。「ここまでコミするオンライン授業」シリーズの記念すべき(?)第1回を務めさせていただきます。

 私が担当しているコース必修の「メディアコミュニケーション基礎」は、A型で授業を進めています。A型の授業って、毎週資料を読んで課題を提出するだけなの?それって、手抜きじゃないの?と思われるかもしれません。いえ、そんなことはありません。毎回の授業は、文章が書かれた資料をmanaba(大学の学習支援システム)上にアップして、学生から課題が提出されるのを待っている、そんなのんきなものではないのです。

<読んでも聞いてもわかる資料をマルチデバイス対応で配信>
 私の授業の場合、本来の授業の時間割は金曜の1限です。学生にできる限り金曜日にしっかり勉強してもらえるよう、毎回の学習に使う資料は、水曜日にアップしています。資料は、もともと対面式の授業で使っていたパワーポイントに、音声を追加しています。パワーポイントは、かつて聴覚障害の学生が履修する中で授業を行った経験から、できる限り、読めばある程度わかるように作ってあります。さらに、学生に「生」の授業での学習を体験してもらいたい、という気持ちを込めて、音声はパワーポイントを操作しながら、パソコンに向かって「授業」をしたものを録音しています。

 資料は確実に学生に届くように、3つの形式で用意しています。1つは、パワーポイントを映像化しYouTubeにアップ。これは、授業をリアルタイム感覚で聞きたい学生用です。もう1つは、音声入りパワーポイントそのものをアップ。これは、Googleドライブを利用しており、じっくり見直ししながら勉強したい学生向けです。最後は、パワーポイントのPDFmanabaにアップです。これは、通信環境に困難のある学生、時間的余裕のない学生用。いずれかの形式を、自分の学習スタイルに合わせて、学生は選ぶことができます。

配布している資料の例。いつもよりやや文字は多めにしています。

<毎週、定時に授業をしている感覚で臨む>
 さらに、毎回の授業に時間割の感覚を持たせるために、課題の提出時間を金曜日の9時開始に設定しています。課題は、「重すぎず、軽すぎず」、「授業時間と同程度の学習時間内でほぼ完結する」ことを心がけています。これまでも、学生の集中力を持続させるために、授業内で1,2回、授業に関するアンケートをしたり、コメントを書いてもらったりする時間を作っていました。そして、回答は、まとめて必ず翌週の授業でコメントをしていました。それとほぼ同等のことができるよう、パワーポイントのスライドの途中に、2回程度、manabaのアンケートの形で回答する課題を入れ込んでいます。多くの学生が、金曜日の朝9時から作業を開始するので、私も同じく、金曜の9時からmanabaのコースをあけて、待機しています。アンケートの回答数を確認しつつ、学生からの質問が掲示板や個別指導コレクションにあがってこないか確認します。

 質問には、気づいたら、とにかくすぐに返事をします。複数から同じ質問が来た時には、その後、より多くの同じ質問が来ることを見越して、コースニュースに投稿をします。全体にかかわるような問題が指摘された場合にも、問題への対応についてコースニュースで告知します。学生の中には、抱えている問題を言語化するのが苦手な人もいますが、そういう学生ともやりとりを重ねることで何に躓いているか発見していきます。この時間帯に学生の動きを確認することで、たいていの問題を拾い上げることができています。

授業中はこんな感じ。パソコン、iPad、スマホを使って掲示板、メール、LINEと質問に回答しています。

 出席カードもアンケート機能を付与したうえで利用しています。たいてい、動画や別の資料へのリンクを貼り、それを閲覧したうえでの感想を書いてもらっています。授業への「出席」は、授業回の翌週の月曜日の夜までに、授業資料の閲覧、アンケート課題の提出、出席カードの提出、この3点セットがそろって認められる、と告知しています。「これだけやれば出席になる」と理解しているので、本来ならば、1限に起きられずに諦めてしまうような学生も、みな授業に「出席」してくれています。この授業の履修者は約150名ですが、初回の「出席」率は100%、2回目の授業も99%の出席率です。課題への回答も、例年の対面型の授業の時よりも、量、質ともに充実したものが多数提出されています。

<提出課題へのフィードバックで学生とコミュニケーション>
 課題に対するフィードバックも、翌週の木曜日までに、全体をまとめたものをアップしています。この一連のサイクルの間に、毎日、何度もmanabaのコースをチェックしています。課題アンケートに入力データがあるのに未提出のままの学生を見つけたら、提出ミスを疑い、メールで連絡をします。個別指導コレクションや掲示板に質問があがってないか確認したり、メールでの問い合わせに答えたり、出席カードの回答の中に質問や疑問の声がないか探して、共有すべきと思ったことは、コースニュースで告知しています。このような学生の不安に素早く対処することで、学生たちも、何か問題が生じたら、すぐに掲示板に書き込んだり、何等かの形で情報を提供してくれたりするようになっています。

 このように、コミュニケーション学部のA型の授業は、非同期型ではあるものの、学生とのコミュニケーションをオンライン上で密に取りながら授業を行っています。配信された資料に基づいて学習する「オンライン授業」のイメージ、少しは変わりましたでしょうか?




東京経済大学コミュニケーション学部
「ここまでコミするオンライン授業」シリーズ
TOKECOM note でもご覧ください)

  • 取り組みを紹介していきます
  • 第1回 A型 「メディアコミュニケーション基礎」(本記事)
  • 第2回 B型 「コンテンツ産業論」<近日公開予定>
  • 第3回 C型 「広告論」<近日公開予定>

【ここまでコミするオンライン授業】取り組みを紹介していきます

新学期の授業が始まって2週間。世の中では、「オンライン授業」が話題になっていますが、オンライン授業って、どんなことをしているのか、よくわからない、という人も多いと思います。東経大のオンライン授業は

A型:配信された講義資料などに基づいて学習するもの
B型:あらかじめ授業内容を録画した動画によるもの
C型:リアルタイム配信される授業に参加するもの

の3つに分かれています。

コミュニケーション学部の最大の特徴の一つ、1年〜4年まで行われる少人数教育の「ゼミ」においてはほとんどが、Zoomなどを用いた上記でいうC型の授業が行われており、教員と学生が週に一度は画面越しですが顔を合わせています。また1年生全員の履修必修「アカデミック・コンパス」においては、B型のオンデマンド授業に加えて授業時間を使ったイベントとしてZoom内で大規模な「お茶会」が先日行われ、新入生がお互いに交流を深めました。楽しかった、いろいろな人と話せたという声が聞こえてきてよろこんでいます。

学生の受講環境に配慮し、一方で日本初のコミュニケーション学部として取り組んでいこうと、各教員が工夫をし、またお互いに情報交換をしながら努力を続けているところです。ここからはA型〜C型それぞれの3回シリーズで、オンラインの「中の人」たちの様子を紹介していきたいと思います。

教員も、はじめての事態に試行錯誤中です。学生の声にできるだけ耳を傾け、軌道修正しながらやっています。そもそもオンラインに限らず、授業は学生と教員がともにつくるもの。「よりよい授業」にするため、学生の皆さんもどうぞ積極的に「コミ」してください。 



東京経済大学コミュニケーション学部
「ここまでコミするオンライン授業」シリーズ



  • 第1回 A型 「メディアコミュニケーション基礎」 (公開中)
  • 第2回 B型 「コンテンツ産業論」<近日公開予定>
  • 第3回 C型 「広告論」<近日公開予定>