2019/03/26

2018年度 卒業式

2019年3月23日、卒業式が執り行われました。
2018年度のコミュニケーション学部卒業生は205名でした。

卒業式後に行われる学位記授与式では、PRプロフェッショナルプログラム修了証の授与や優秀卒業制作・卒業論文および最優秀卒業論文・卒業制作の表彰が行われました。

ちなみにPRプロフェッショナルプログラム修了証は、PRプロフェッショナルプログラムに所属し、所定の基準(PRプランナー補資格取得および社会調査士資格取得に必要な授業科目の単位を修得など)を満たした学生に授与しています。











最後は教員から卒業生への一言で締めくくりました。
卒業生の皆さん、卒業、おめでとうございます!



2019/03/19

佐々木教授がテレコム社会科学賞を受賞

 このたびコミュニケーション学部の佐々木裕一教授が電気通信普及財団のテレコム社会科学賞を受賞しました。おめでたいことです。今回は、この賞の概要と受賞のことばを寄稿してもらいました。

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 『ソーシャルメディア四半世紀 情報資本主義に飲み込まれる時間とコンテンツ』(日本経済新聞出版社, 2018年)で第34回テレコム社会科学賞を受賞しました佐々木裕一です。

 この賞は電気通信普及財団という公益財団の設けた賞になります。社会科学部門とシステム技術部門があり、私が受賞したのは前者。テレコミュニケーションに関する研究で、経済学、経営学、社会学、政策学、法学のすべての中から選ばれるものですし、該当作品なしの年もあるので、絶対的水準で評価されるかつ伝統もあるなかなか重みのある賞です。

 ちなみに2年前に『ツイッターの心理学 情報環境と利用者行動』で同僚の北村智准教授と奨励賞をもらっていたのですが、その研究奨励を受けて、今回、最も良い賞に至ったという経緯があります。近々、帝国ホテルでの贈呈式と記念講演に臨みます。

 『ソーシャルメディア四半世紀』は、実務も踏まえた私の20年以上の多面的研究成果ですので、嬉しさもひとしお。実は、昨年6月の出版以来、ネット利用者からは「子どものスマホでのSNS利用に本気で目を配るようになった」、ネット実務家からは「この歴史を知っているのと知らないのとではとんでもない差」とか「気づきが多すぎるので線を引きながら2度読んだ」とか「編集機能のないメディアについて非常に考えさせられた」など、複数の観点からとても褒めてもらっていました。



 それに加えて今回、世のためになる優れた知見として学術界も唸らせることができ、してやったりという種類の嬉しさもあります。社会科学的な実務界と学術界の2つは読む本が違って分断されているため、両者のいずれにも読ませる作品に仕上げようというのは自分に課した課題の1つでもありましたので。日本でもエンジニアは工学の論文を読みますが、文系ビジネスマンは社会科学の学術的成果をあまり読まずに、いい加減な「成功事例」的な本を読んでいることが多いんですよね。

 さて、本書の内容に少しだけ触れると、情報技術によって作られる物理的環境が私たちのコミュニケーションのあり方や内容に少なからぬ影響をもたらすという仮説がこの研究の出発点でした。この物理的環境は「アーキテクチャ」と呼ばれますが、これを相手にする際、各ウェブサービスの持つ収益モデルも詳細に分析していく必要があるという着眼がこの本の特色になります。時代とともに変化していったアーキテクチャ/利用者/収益モデルの関係をインタビューデータをふんだんに引用し、マクロデータも参照しながら描き出しました。

 歴史を詳述した帰結は、「人間同士の、そして人間とコンピュータのコミュニケーションを今より低速化させ、ひとりひとりが内省の機会と深さを得られるような情報ネットワーク社会を設計すべき」というもの。つまり現状のアーキテクチャで展開されるコミュニケーションはかなりまずいという主張です。その「まずさ」に対処するためのいくつかのアイディアも本では素描しています。

『ソーシャルメディア四半世紀』(日本経済新聞出版社のページ)

 拙著の内容は、2019年度の「ソーシャルメディア論」で余すことなく話す予定ですので、関心のある学生はどうぞ履修して下さい。

 最後になりましたが、取材に応じて頂いたネットサービス経営者の方々、その他本書を世に出すにあたりご協力いただいた方々、そして日々よい刺激をもらっている学部の同僚にもこの場を借りまして御礼申し上げます。

2019/03/13

学問のミカタ 「コミュニケーション学」の海へ漕ぎだすために


コミュニケーション学部の光岡です。

このエッセイが公開される時期はもう3月も半ば。2019年度の大学入試も一段落し、高校3年生は新たなスタートに胸を躍らせ、高校12年生は、改めて進路を考えている時期かと思います。そこで今回の「学問のミカタ」では、今高校生、大学生が「コミュニケーション学ぶ意味」というテーマで進めたいと思います。

日本における「コミュニケーション学(部)」の二つの意味
 僕が働いている東京経済大学コミュニケーション学部(通称トケコム)は、1995年に日本で初めて「コミュニケーション学」を冠して創設されました。その歴史を振り返ると、イギリスの「Goldsmiths College, University of London」や、カナダの「Simon Fraser University」など英米圏のコミュニケーション学部を参考にしていたようです。両者はその最たるものですが、一般に英米圏おいて「コミュニケーション学(Communication Studies)」とは、例えばマスメディアの選挙報道が私たちの投票行動にいかに影響を与えているかや、通信機器が毎日持ち運べるガジェットになったことで日々の生活やビジネスがどう変わっていくのかといったテーマを扱う、社会科学(Social Sciences)の一領域だと考えられてきました。
 一方で日本では、「〇〇コミュニケーション学部」と言った場合には、社会科学に加えて、英語を中心とした外国語を基礎に、異文化について学ぶ人文学(Humanities)よりの学部が存在します。「異文化コミュニケーション学部」や「国際コミュニケーション学部」といった名称の学部がそうです。
 ですので、日本で「コミュニケーション学」を勉強してみたいと希望する際には、実際にはご自身が、マスメディアからスマートフォンにいたるメディアを介したコミュニケーションについて学びたいのか、むしろ言語能力を生かした対面コミュニケーションについて学びたいのかをじっくり考えて選択をする必要があります。

「コミュニケーション学」って役に立つの?
 トケコムは、伝統的に社会科学に強みを持っていますが、この「コミュニケーション学」、社会科学の他の領域―例えば、経済学や経営学、法学―に比して、将来の仕事に結びつきにくいように見えるかもしれません。なぜなら、一般企業に勤めるのであれば、経済学に関する一般的な知識も、基本的な経営の考え方も漠然と必要そうに見えるからです。
 ところがです。もう少しその具体的な業務の場面を想像してみましょう。1990年代からの30年を振り返ってみても、仕事の現場で利用される通信手段は大きく変わってきました。「電話とFax」の時代から「ポケベルとPC」、「携帯電話とノートPC」、そして「スマートフォン」へと。日々の仕事のテンポは等比級数的に加速し、それに伴って、組織のありかたやビジネスモデルが大きく変化していったのがこの30年です。実は、このような現代社会におけるメディアの変容を俯瞰的にとらえ、クリエイティブに使いこなすことで、仕事の現場でも柔軟に対応する力を養うのがコミュニケーション学です。
確かに、経済のマクロの動静を読む力や、経営組織の絶え間ない改善に取り組む能力は、経営者や管理職にとって必須の力でしょう。一方で、その前に皆さんが社会人として直面するのは、むしろ仕事の現場で異なる世代、文化的背景をもった仲間とチームでミッションを遂行する能力です。具体的には、皆さんは自分の親のような上司とも、今後急速に増える外国人労働者の同僚とチームを組んで仕事をしていくことになるので。したがって、世代や文化が異なれば、当然、慣れ親しんだメディアも、コミュニケーションの好みも異なり、このようなそれぞれに固有のコミュニケーションの「カタ」を調整する能力こそが、いまや就職活動でマジックワードになってしまった「コミュニケーション能力」の内実のはずです。

現代社会におけるジェネリックスキルとしての「コミュニケーション学」
 ゆえに、「コミュニケーション学」と聞くと、まずメディアや広告業界で働くための専門領域であったり、語学や異文化理解を元にしたホスピタリティ産業のための学問領域だと思ってしまうかもしれません。けれども、むしろコミュニケーション学とは、経済学や経営学と同じように、ほとんどの企業活動、または公的セクターにおいて求められる能力を育む領域です。今後も、仕事を支えるメディア環境の変化は早まることはあっても緩やかになることはないでしょう。だとすれば、日常生活の基底を成すコミュニケーション形式の変容に柔軟に対応しながら、円滑に仕事をこなしていく能力はさらに重要視されていくことになるはずです。その意味では、「コミュニケーション学」とは、固有の専門領域であると同時に、もはや現代社会におけるジェネリックな能力を育む土壌としての側面を持ち始めているのかもしれません。「コミュニケーション学」に関心を持った皆さん、トケコムはもちろん、数多くの大学やイベントに足を運んで、直接情報を集めて下さい。それ自体、「コミュニケーション学」の実践でもありますから。

【追記】トケコムでは、2016年度以降、アジア地域を中心に積極的に海外派遣プログラムを提供しています。ですので、メディアも国際性も、という欲張りなあなたにも向いている「コミュニケーション学」部です。