2019/04/23

著者に会える!【教員出版紹介】

ハナミズキが咲きました。
トケコム生のみなさん、新生活には慣れてきましたか。

前回の記事で、テレコム社会科学賞を受賞した『ソーシャル・メディア四半世紀』の著者・佐々木裕一教授のコメントを紹介しました。佐々木先生曰く、「本の内容は担当講義ソーシャルメディア論で余すことなく語る」!。

大学で学ぶ醍醐味の一つは、本の著者(教員)から直接、最先端の研究について話が聞けること、また著者と直接対話できることにあると思います。著者の熱量に触れ、本づくりの舞台裏を垣間見れるというわけです。

ここで、2018年度のトケコム教員の出版物をご紹介しましょう。

それぞれ、著者の先生方から寄せられたコメントも付けました。


◯小林誠 准教授
山口徹 編(2019)『アイランドスケープ・ヒストリーズ―島景観が架橋する歴史生態学と歴史人類学』風響社

私は「『陸』の景観史――ツバル離島の村落と集会所をめぐる伝統、キリスト教、植民地主義」を担当しました。

島の景観の歴史を文系・理系の研究者がそれぞれの手法で分析したです。
小さな島であってもそこには独自の歴史の厚みがあります。
島の景観の中に、自然と人間の複雑な絡み合いの歴史を読み解きました。
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◯柴内康文 教授
ロバート・D・パットナム、デヴィッド・E・キャンベル著/柴内康文訳(2019)『アメリカの恩寵』柏書房




この本は現代のアメリカ人がどのように宗教を信じているか、を扱った本の翻訳です。

宗教はコミュニケーションとどう関わるのでしょう。
コミュニケーションは人と人のつながりの中で起こりますので、これを考察するときには人間関係について考えることが必要で、そしてアメリカの人間関係を理解するときには、宗教の存在を無視できないのです。
日本にいると宗教について認識することは少ないかもしれませんが、それだからこそ、他文化において重要な意味を持つ宗教について理解することはグローバル化する現在極めて重要です。
筆者の一人ロバート・パットナムは、現代社会、特にコミュニティ論の世界的な第一人者で、インターネット上のコミュニティを考える際も彼の議論は必須という存在です。私が書いた解説また朝日新聞上の本書書評も参考までに。
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◯光岡寿郎 准教授

光岡寿郎・大久保遼編(2019)『スクリーン・スタディーズ  デジタル時代の映像/メディア経験』東京大学出版会

僕は元々、メディア・テクノロジーの発展と空間感覚の変容に関心があります。
多くのメディア研究者は、このテーマだとスマートフォンに代表される文字通りモバイル・メディアを扱うわけですが、一方でモバイル・メディアに埋め込まれた高機能のICチップに代表されるテクノロジーは、同様に据え置き型のメディアの機能やサイズにも大幅な変更を加えています。
ゆえに、モバイル・メディアの特性を理解しようとすれば、同様にその端末を携帯して経験する個々の「場」、つまりメディアの構造体として経験される空間を分析する必要があるはずです。
そんな特徴を持つ21世紀初頭のメディア環境を、「スクリーン」という切り口から描いたのが本書です。
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◯北村智 准教授・柴内康文 教授
西垣通編(2018)『基礎情報学のフロンティア』東京大学出版会
この本は、2018年度末で定年退職された西垣通先生が編まれたものです。
「情報」を扱う学問というと一般には理工系のイメージが強いかもしれませんが、コミュニケーションが情報伝達を含むものであったり、あるいはスマホのような情報技術を用いて行われたりするものであったりするように、コミュニケーションを扱う学問でも「情報」を無視することはできません。
この本には基礎情報学の専門的論考以外にも、柴内先生と北村が、社会心理学/メディア研究の立場から基礎情報学にアプローチした論考が2章、3章として含まれています。この本に関しては西垣通先生が書かれたエッセイがありますので、そちらも参考にしてください。
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なお、私が授業をする側になって感じたことは、教員もまた、学生との対話から研究のヒントを大いに得ているということ。「おしゃべり」から生まれる知の現場を、学生の皆さん、どうか楽しんでくださいね。

それでは、良い連休を!

2019/04/10

佐々木教授 テレコム社会科学賞贈呈式@帝国ホテル

佐々木裕一です。前回はテレコム社会科学賞受賞の報として取り上げてもらいましたが、「もう1回、贈呈式と記念講演で書け」と言われました。トケコム学生へのメッセージもありで、調子にのって書くことにしました。
 
贈呈式は東経大創設者である大倉喜八郎が作った帝国ホテルで3月20日に行われました。そこではじめて私も審査経緯を聞かされたのですが、このページにあるように、『ソーシャルメディア四半世紀』を書くにあたり私が意図していたことがいずれも高く評価されていて、大変嬉しい気持ちになりました。


その1つが大量のインタビューのコメント引用が「臨場感豊か」と良い意味で評価されたことです。これは読み物として飽きさせない工夫でしたが、学術的成果っぽくなく見えるという点を孕んでいました。本の表紙もド派手なピンクだったわけで。

けれどもそれは杞憂で、審査委員長からは「読み物としてもすごい引き込まれるんだけど、研究フレームと論理構成もしっかりしていて非常に優れていた」と褒めていただきました。

もう一点「インターネット空間の先を見通し、あえて立法や行政主導の規制の必要性にも触れているという点は類書にはない指摘」という評価があり、こちらは実は私には意外でした。

法学者の審査員の先生と話すと「役所の政策検討委員会では、市場に任せてイノベーション重視という考え方が圧倒的に強い。昨今は社会的リスクも踏まえ規制議論も高まっているが、その指摘を説得的に日本の書籍として盛り込んだものは少ない」とのことでした。

記念講演のようす

さて、トケコム学生へのメッセージ。

拙著の「あとがき」ではトケコムの教員5名が登場します。北山聡さん、柴内康文さん、北村智さん、光岡寿郎さん、そして昨年度末に退職された西垣通さんです。この他の先生も含めて、トケコムのメディアコミュニケーション研究は非常に高いレベルにあります。まずそこはよく知った方が良いですよ。

さらに言うと、変化するメディア環境とコミュニケーションに敏感で、それが行動で示されているのがトケコム。授業科目も積極的に変えて現代的な教員を採用していますし、ゼミもどの学部より重視されています。卒業研究も当たり前に必修です。

そういう文化に惹かれて集ってきた優れた研究者と日常的に話をしていたことが、私の今回の受賞にもつながったわけで、だから、学生もそういった教員との「おしゃべり」を大事にするべき。

「おしゃべり」としたのは、目的ありきの「議論」ではないということ。実はそういう一見他愛のないやりとりに学生にとっての研究のタネが転がっているし、そういうタネを引き出せることがハイレベルのトケコム教員の条件になっています。知らなかったでしょ、そんなこと。

ということで、学生のみなさん、とにもかくにもまずは教員との「おしゃべり」を。

私の電気通信普及財団賞に関するブログポストもさすがにこれで終わりです。2度もありがとうございました。新学期からまた張り切ってやるつもりです。

【追伸】光岡先生も学部教育について良いこと書いているのでこちらも読むと良いでしょう。
「コミュニケーション学」の海へ漕ぎだすために
https://comtku.blogspot.com/2019/03/blog-post.html

2019/04/04

桜の新学期

サクラ咲く4月2日。
2019年度の入学式が挙行され、
コミュニケーション学部には219人の新入生を迎えました。
トケコムへようこそ!

















式典では、新トケコム生のうちの一人が、
全学部1583名の新入生代表として堂々たる宣誓をおこないました。

新入生宣誓@百周年記念館

















高校時代にJICA主催のグローバルユースキャンプに参加して
国際貢献や異文化交流への関心を強めたこと。
フィリピンでのボランティア活動で目にしたもの、感じたものが
世界へと志向する自身の原点となっていることを悠然と語り、本学では

「留学や海外インターンシップなどの体験を通じて
 積極的に異文化の中に入っていくような実践的な学びも深めていきたい」

と高らかに宣誓しました。

壇上の両脇に設置されたスクリーンには
スピーチに合わせて字幕が映し出されました。


志を持ち、希望に満ちた新入生を迎えられたことを喜ばしく思うと同時に
彼、彼女らが大きく羽ばたける教育環境を整えなければと
トケコム教員としての責任も感じています。

















さあ、新学期。
新しい友人、新しい先生、新しい学問。
キャンパスには「新」が溢れています。

ピカピカの新入生219人がどんな花道を歩くのかを想像しながら
ブログ「きょうもトケコム」の2019年度も
はじまり、はじまり。

2019/03/26

2018年度 卒業式

2019年3月23日、卒業式が執り行われました。
2018年度のコミュニケーション学部卒業生は205名でした。

卒業式後に行われる学位記授与式では、PRプロフェッショナルプログラム修了証の授与や優秀卒業制作・卒業論文および最優秀卒業論文・卒業制作の表彰が行われました。

ちなみにPRプロフェッショナルプログラム修了証は、PRプロフェッショナルプログラムに所属し、所定の基準(PRプランナー補資格取得および社会調査士資格取得に必要な授業科目の単位を修得など)を満たした学生に授与しています。











最後は教員から卒業生への一言で締めくくりました。
卒業生の皆さん、卒業、おめでとうございます!



2019/03/19

佐々木教授がテレコム社会科学賞を受賞

 このたびコミュニケーション学部の佐々木裕一教授が電気通信普及財団のテレコム社会科学賞を受賞しました。おめでたいことです。今回は、この賞の概要と受賞のことばを寄稿してもらいました。

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 『ソーシャルメディア四半世紀 情報資本主義に飲み込まれる時間とコンテンツ』(日本経済新聞出版社, 2018年)で第34回テレコム社会科学賞を受賞しました佐々木裕一です。

 この賞は電気通信普及財団という公益財団の設けた賞になります。社会科学部門とシステム技術部門があり、私が受賞したのは前者。テレコミュニケーションに関する研究で、経済学、経営学、社会学、政策学、法学のすべての中から選ばれるものですし、該当作品なしの年もあるので、絶対的水準で評価されるかつ伝統もあるなかなか重みのある賞です。

 ちなみに2年前に『ツイッターの心理学 情報環境と利用者行動』で同僚の北村智准教授と奨励賞をもらっていたのですが、その研究奨励を受けて、今回、最も良い賞に至ったという経緯があります。近々、帝国ホテルでの贈呈式と記念講演に臨みます。

 『ソーシャルメディア四半世紀』は、実務も踏まえた私の20年以上の多面的研究成果ですので、嬉しさもひとしお。実は、昨年6月の出版以来、ネット利用者からは「子どものスマホでのSNS利用に本気で目を配るようになった」、ネット実務家からは「この歴史を知っているのと知らないのとではとんでもない差」とか「気づきが多すぎるので線を引きながら2度読んだ」とか「編集機能のないメディアについて非常に考えさせられた」など、複数の観点からとても褒めてもらっていました。



 それに加えて今回、世のためになる優れた知見として学術界も唸らせることができ、してやったりという種類の嬉しさもあります。社会科学的な実務界と学術界の2つは読む本が違って分断されているため、両者のいずれにも読ませる作品に仕上げようというのは自分に課した課題の1つでもありましたので。日本でもエンジニアは工学の論文を読みますが、文系ビジネスマンは社会科学の学術的成果をあまり読まずに、いい加減な「成功事例」的な本を読んでいることが多いんですよね。

 さて、本書の内容に少しだけ触れると、情報技術によって作られる物理的環境が私たちのコミュニケーションのあり方や内容に少なからぬ影響をもたらすという仮説がこの研究の出発点でした。この物理的環境は「アーキテクチャ」と呼ばれますが、これを相手にする際、各ウェブサービスの持つ収益モデルも詳細に分析していく必要があるという着眼がこの本の特色になります。時代とともに変化していったアーキテクチャ/利用者/収益モデルの関係をインタビューデータをふんだんに引用し、マクロデータも参照しながら描き出しました。

 歴史を詳述した帰結は、「人間同士の、そして人間とコンピュータのコミュニケーションを今より低速化させ、ひとりひとりが内省の機会と深さを得られるような情報ネットワーク社会を設計すべき」というもの。つまり現状のアーキテクチャで展開されるコミュニケーションはかなりまずいという主張です。その「まずさ」に対処するためのいくつかのアイディアも本では素描しています。

『ソーシャルメディア四半世紀』(日本経済新聞出版社のページ)

 拙著の内容は、2019年度の「ソーシャルメディア論」で余すことなく話す予定ですので、関心のある学生はどうぞ履修して下さい。

 最後になりましたが、取材に応じて頂いたネットサービス経営者の方々、その他本書を世に出すにあたりご協力いただいた方々、そして日々よい刺激をもらっている学部の同僚にもこの場を借りまして御礼申し上げます。