2020/06/09

【ここまでコミするオンライン授業】第3回   C型:広告論 ~リアルタイム鴉声篇~

※2020年6月5日付ブログ記事からの転載です。

「ここまでコミするオンライン授業」、第三回目は「広告論」の授業のご紹介です。コミュニケーション学部の大岩直人(オオイワナオト)がお送りします。

「広告論」は授業参加点(つまりは出席点)重視の授業です。火曜日1限、朝9時スタート。……キビしいですね。私もみなさんと同じ学生の頃(はるか昔ですが)、1限の授業に遅刻せず出席するというのは、これはもう修行の域でございました。だいたいが前の晩はバイト疲れ恋愛疲れ(?)で夜中の2時頃の就寝です(今は加齢のため2時頃途中覚醒しています)。それからぐっすり寝入って(今は加齢のため眠りはかなり浅いです)朝の8時頃は深いノンレム睡眠のまっただ中。それをどうやって9時までに大学のキャンパスまで身体を空間移動しろと言うのだ? でも、その問題、オンライン授業が解決するかも。あなたは855分に目覚ましをセットし、9時に寝ぼけ眼でとりあえずPCを立ち上げ、zoom の招待アドレスをクリックすればいいのです(これでまずは出席点クリア?)。

やがて担当教員の声(つまりワタクシの声)が沸々と聞こえてくる(お聞き苦しい点につきましては何卒ご容赦のほどを)。内容は前回の授業の復習から始まるみたいで、事前にオンラインで送られてきた資料は読んだし(3分で読めた)課題もググって調べておいたので、寝ぼけたアタマでもなに言っているかはわかる。耳を傾けるのは苦じゃない。でも、やっぱり声が良くないね、鴉声ってヤツだ。(現在脳の稼働率15%程度)。
15分経過。オオイワさんが突然なにやら妙なことを言い出した。「広告を疑え」と。広告論の授業なのに広告を疑うの? おかしなコトをいうひとだ。それにバーチャル背景につかっている画像が反転している。ワザとやってるのかな?


(注)zoom のバーチャル背景をあれこれ考案している教員のみなさん。ミラーリングのチェックボタンをオンにする時はくれぐれもお気を付けください。ホスト側できちんと見れるようにと敢えて水平反転させると、視聴者側(ゲスト側)ではまんま裏返しに見えていますので。

でも、よくよく話を聞いてみると「広告という訳語が今の時代にそぐわない」、そんなことが言いたいみたい(このあたりで脳の稼働率40%程度にアップ)。「これは現代広告論の授業です。まずは従来の広告の定義を疑うことから始めましょう」とのこと。
30分経過。いっしょにいくつかの実際の広告作品を見ていきましょうと、zoom の画面共有で YouTube の動画が流れ出す。海外の広告作品だ。今まで見たことがないものばかり。日本語字幕も付いてないからわかんないよね、と思っていたらそうでもなかった。けっこう面白い! 言葉がわからなくても通じるんだなぁ。それにしてもちょっと音声デカすぎ。チャットで「コンピュータ音声、すこし下げてください」とタイプする。が、オオイワさん、講義に夢中で気付かないようだ。ま、いいか。イヤホン外す。部屋中にコンピュータの音声とオオイワさんの鴉声が聞こえる(このあたりで脳の稼働率、否応なく80%程度にアップ)。「チャーミングな広告表現というのはノン・ヴァーバルで伝わるものなんですよ」なんて言っている。ノン・ヴァーバルってなんだ? これもあとでググっておこう。
気が付けば、すでに時計の針は10時。「今日はここまでにしましょう」とのこと。ラップアップに前回の課題レポートのフィードバックが画面共有される。他の人のいろんな回答。みんな、ナカナカうまいこと言うなあ。視点が斬新っていうヤツだね。ふむふむ。で最後に、ええっ? 自分の書いたレポートの一部も紹介されてるぞ。「○○さんの書いたこのレポート、徹底的に具体的なところがいいのです。うまくまとめよう、そつなくまとめようとしないところがいい。素敵なノイズがいっぱい。ディテールの解像度が高いところがいいのです」だって。褒められたらさすがに悪い気はしないよね(脳の稼働率ここで100%達成)。ということで本日のzoomミーティング授業終了。退室する。
10時半。1限終わったらまた寝ようと思っていたのに、眠気が完全に失せてしまっている。このまま授業中に出された最後の課題もやっちゃおう。

オンライン授業を開始して、早や1ヶ月以上が経過しました。現在、こんな感じでみなさんに私のオンライン授業を受けていただけているとしたら嬉しい限りなんですが。……


さて、私がリアルタイム型のオンライン授業にこだわる理由はいくつかあります。ひとつは、同じタイミングでみんなで共通のテーマについて思考したり作品を鑑賞したりすること、そのシズル感こそが大切だと考えているからです。コンテンツは同じでもその場の共鳴の仕方次第で印象の残り方は大きく異なるものです。だから、毎回の授業は一期一会。ちょっと大げさに言えば、授業とは学生と教員との間のその場その場のアート行為なのではないでしょうか。畑山博さんが書かれた『教師 宮沢賢治のしごと』という本の中に以下のような文章があります。「学校の教師という仕事は、それをほんとうに誠実に心を賭けてやったら、音楽とか絵とかいうような芸術より、もっとすばらしい芸術行為になるのだと、私は思っています」と。
あとは意地みたいなものもあると思います。黎明期からデジタルコミュニケーションを牽引してきた(つもり)の自分が授業形態においても常に新しい試みにチャレンジしなくてどうする? という気概めいたものが私の中にあるようです。だからと言って、学生のみなさんに余分な負担(wifi 環境とか使用デバイスの問題とか、あるいは電波を通すと鴉声がさらにヒドくなるとか)を強いることのないよう常にチェックし、新しいオンライン授業の形態を進化させていければと思っています。

対面授業が復活する日がほんとうに待ち遠しいです。でも、オンラインにはオンラインの良さもあります。これからの時代はリアルとバーチャルのハイブリッドが当たり前になっていくと思います。今こそ、その実験の場を集中的に与えられているのだと解釈し、オンライン授業のあり方を徹底的に「考え抜く。」時なのではないでしょうか。我々教員が今、教育の現場でなにが出来るのか、そのベストを尽くすために状況の変化に応じて常にスピーディに挑戦していきたいと決意を新たにしています。

「じっくり考えるから、すばやく変われる。」


でも、対面授業に戻った時のために、普段より1時間早めにベッドにつく練習もそろそろ始めておいてくださいね。でないと、9時に間に合いませんよ!


さて、大岩の「広告論」は「現代広告論」の授業です。インターネット四半世紀。インターネットの普及以降、広告コミュニケーションは大きく変化し、それも既にひとつの「歴史」となったのではないでしょうか。520日より10日間、日本経済新聞の電子版、文化面の「美の十選」にて、杉山恒太郎氏の「世界を変えたネット広告 10選」の連載に合わせて作品解説を担当しました。取り上げた10作品は、現代広告を代表する日本の名作ばかりです。是非ご覧になってみてください。(電子版ですのでいつでも読めます。有料記事ですが、会員登録をすれば月10本までは無料で閲覧可能)第一回目の記事は以下のURLにて。それ以降連続して合計10作品掲載してあります。



最後に、新型コロナウイルスでお亡くなりになった方々に心から哀悼の意を表すとともに、体調を崩されている方々の一日も早い回復を祈りつつ。

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