2014/07/24

TEDでメディア・コミュニケーションの理解を深める

 東経大コミ部の柴内です。

 TEDをご存じの方も多いと思います。

 もともと「テクノロジー」「エンターテインメント」「デザイン」の三分野での先端的なプレゼンテーションを行うイベントとしてアメリカで始まったものですが、いまではこれらの分野に限らない多彩な講演が世界中で行われると共に、オンラインでも見られるようになっています( http://www.ted.com/ )。NHK・Eテレの『スーパープレゼンテーション』という番組でも解説付きでTEDの講演が流されており、それを見たことのある人もいるかもしれません( http://www.nhk.or.jp/superpresentation/ )。一講演20分くらいの、それほど長いものではありませんが、深く考えさせられるものが多いです。
 これらの講演はコミュニケーション学部の学びと関係するものも多く、実際に(複数の大学での)私の授業やゼミで見せたこともあるのですが、その中で特にコミュニケーションやメディアの問題を考える上でヒントになるものを、過去5年間くらいの間の範囲で選びました(日本語字幕付きに限定)。
 以下、私の見立てで5つにジャンル分けをしたので、まずそれぞれについて解説していきましょう。

 「(1) コミュニケーションの変化がもたらす力とは?」は、インターネットやソーシャルメディアで人々の力が結集する結果、何が生み出されるのか、特にその肯定的な面を考える手がかりとなる講演を集めています。ここで取り上げた演者がクレイ・シャーキーです。彼には『みんな集まれ!ネットワークが世界を動かす』( http://www.amazon.co.jp/dp/4480863990 )という著作があります(東経大コミ部編『コミュニケーション学がわかるブックガイド』(NTT出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4757103468 で、この本の解説を私が書きました)。でも、インターネットは人々をつなぎ、プラスをもたらすばかりなのでしょうか。ネットによる人々のつながりが、全面的によいものとは限りません。目立ちにくいその問題点をどうやって克服できるか、というテーマでまとめたのが「(2) デジタルでつながることが作り出す問題点とは?」です。(1)(2)は各一つずつでもよいので、あわせて見ると視野が広がります。ネットやソーシャルメディア、あるいは携帯電話は、人々をつなぐツールですが、このことは私たちの友人や家族をはじめとした人間関係そのものにどのような影響を与えたのでしょうか。「(3) オンライン時代の人間関係のあり方とは?」に取り上げた二つの講演は、異なった立場からそれを考えるもので、これは二つあわせて見たいところです。そして、つながり・ネットワークとはそもそも何か、その本質的な意味を考えるためには「(4) 「つながり」の持つ意味」が参考になります。ここまではインターネットとコミュニケーションそのものをめぐる考察が多かったのですが、それが生み出している新たな社会現象、といった側面からのいくつかの講演を「(5) オンライン化された社会で起こる変化」にまとめました。

 5年前より古い(!)などの理由で落とした、大事な議論もたくさんあるのですが、いつかまた紹介できればと思います。こうして集めていくと、ちょうど半年の授業回数くらいになります。毎回これらを見ながら考える講義・ゼミなどやってみても面白いですね。

 (1) コミュニケーションの変化がもたらす力とは?
 クレイ・シャーキー 「インターネットが (いつの日か) 政治を変える」(2012)
 クレイ・シャーキー 「思考の余剰が世界を変える」(2010)
 クレイ・シャーキー 「ソーシャルメディアはいかに歴史を作りうるか」(2009)

 (2) デジタルでつながることが作り出す問題点とは?
 イーライ・パリザー「危険なインターネット上の「フィルターに囲まれた世界」」(2011)
 ジェニファー・ゴルベック「カーリー・フライの謎解き : ソーシャルメディアでの「いいね!」があなたの秘密を明かす?」 (2013)
 イーサン・ザッカーマン「グローバル・ボイスに耳を傾ける」 (2010)

 (3) オンライン時代の人間関係のあり方とは?
 ステファーナ・ブロードベント「インターネットによる親密な人間関係の構築」(2009)
 シェリー・タークル 「つながっていても孤独?」(2012)

 (4) 「つながり」の持つ意味
 ニコラス・クリスタキス「社会的ネットワークの知られざる影響」 (2010)
 アーロン・コブリン「人間性を巧みに描く」 (2011)

 (5) オンライン化された社会で起こる変化
 ジョハナ・ブレクリー「ソーシャルメディアとジェンダーの終焉について」(2010)
 アダム・オストロー「生涯最後の近状報告をしたあと」 (2011)
 フアン・エンリケス「タトゥーのように残るあなたのオンラインライフ」 (2013)