2016/10/10

【学問のミカタ】芸術の秋を楽しむ


コミュニケーション学部で「メディア文化論」を担当している光岡です。

 今月のテーマは「秋」です。皆さんにとって「秋」は何の季節ですか? 旬になる果物、野菜も多い「食欲の秋」ですか? それとも、体を動かすのに気持ちいい「スポーツの秋」でしょうか? 私の研究の一端ということもあり、今回はもう一つ、「芸術の秋」というテーマでお送りします。

 多くの方は「芸術」と言うと静かで気取った美術館の展示室を思い浮かべるのではと思いますが、20世紀末以降の芸術のトレンドはもっとカジュアルな体験を提供しています。特に東京では、美術館を離れたまちなかのアートスペースの数が大きく増加しており、日々の生活のなかでもまちなかで芸術作品と出くわすということも増えてきました。このような出会いのなかでも、代表的なものが国際芸術祭です。

 国際芸術祭とは、定期的に同時代を代表するアーティストを招いて開催されるイベントで、2年に1度のものをビエンナーレ3年に1度開催されるものをトリエンナーレと呼びます。より多くの方になじみ深いのはフジロックのような音楽フェスティバルだと思いますが、そのアート版とでも思って頂ければ良いのではないでしょうか。

 この秋も特色のある芸術祭が複数開催されており、10月に訪れることができる芸術祭をいくつかご紹介します。

第2回あいちトリエンナーレ会場間を
走るベロタクシーを利用する筆者(光岡)
あいちトリエンナーレ

現在開催中の第3回愛知トリエンナーレより
豊橋会場 久門剛史さんの作品
今回で3回目を迎えた芸術祭です。日本での国際芸術祭は2000年に入ると、地域型の代表である「越後妻有トリエンナーレ」、都市型の代表である「横浜トリエンナーレ」を皮切りに増加していくのですが、後発のトリエンナーレはそれぞれ既存の芸術祭とは差異化を図ります。
あいちトリエンナーレの特徴は、いわゆる絵画や彫刻のような芸術作品だけではなく、「パフォーミングアーツ」の公演を数多く取り入れている点です。今回も愛知県立芸術劇場を中心に、勅使河原三郎の作品など数多くの公演が予定されています。ですので、関心のある方は、パフォーマンスの日程を調べたうえで足を運ばれることをお勧めします。とりわけ10月は週末に数多くの公演が予定されているため、いまから訪れても、あいちトリエンナーレらしさを十分に楽しめるはずです。会期は1023まで。

 こちらは首都圏にお住まいの方は比較的気軽に参加できる芸術祭。首都圏では横浜トリエンナーレが開催されるようになってからは、大規模な都市型の芸術祭は増えなかったとこともあり、首都圏では久々の大きな国際展です(正確には私も今月行く予定なので大規模ではないかもしれませんが……)
 ディレクターは芹沢高志さんが務められています。日本でビエンナーレ文化が定着する過程では、それぞれ方向性は異なるものの、北川フラムさんと芹沢高志さんが主導的な役割を果たしてきました。特に芹沢さんは、別府で開催された「混浴温泉世界」に代表される地域の特性に根差した芸術祭の企画に定評があり、県内3カ所の会場をどう生かしているのかが楽しみな国際展です。会期は1211まで。

県北芸術祭

 こちらも今年度、茨城県の北部を舞台に初開催の芸術祭。さいたまトリエンナーレはこれから僕自身会場を回らないと分からない部分があるのですが、こちらは地域型のトリエンナーレらしい設計になっています。
都市型と地域型の大きな違いは、芸術祭の楽しみ方です。例えば、その代表である越後妻有トリエンナーレは基本的には車移動が出来る方が断然楽しめます。同様に北川氏が深くかかわった瀬戸内芸術祭も船移動が基本。今回の県北に関しても、あいちのように都市間を移動するというよりは、車で移動しながら一つ一つの作品を楽しむという印象です。
ディレクターは南條史生さん。日本の現代美術界を長年牽引してきたキュレーター、プロデューサーです。南條さんはシンガポールビエンナーレのディレクターを務めたこともあり、都市的な印象のある方なのですが、今回は今まで培われたセンスが地域型の国際展にどう反映されるかがみどころです。会期は1120まで。


 いかがでしょうか? 今回は、いわゆるビジュアルアーツを中心とした芸術祭に絞って紹介しましたが、パフォーミングアーツに目を向ければ「フェスティバル/トーキョー」も今月には始まりますし、関西では「KYOTO EXPERIMENT」も開催されるなど、「芸術の秋」に相応しいイベントが数多く提供されている10月です。
 スポーツとのセットはなかなか難しいかもしれませんが、それぞれ地域を売りにしていますので、各地の特色ある美味しい食事とセットでこの秋は芸術も楽しまれてはいかがでしょうか?

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