前半は、クアラルンプールにある Asia Pacific University of Technology and Innovationで午前に英語研修を受け、午後は研究テーマにしたがって街中を視察。5日目は、トケコミへのマレーシアからの留学生実家がある同国南端のジョホールバルへ移動し、ご両親からの大歓待を中華料理店で受けました。その後、陸路でシンガポールに入り、半日だけ観光をして帰国。
現代的なAPU新キャンパス |
と、濃密なプログラムでしたが、学生によるマレーシアの感想は次回に譲り、今回は3日目午後に行われたクアラルンプール在住、鵜子(うのこ)幸久さんの講演、題して「マレーシアでビジネスするって、どんな感じ?」を通じて、アジアにおけるグローバル化の実態とみなさんのキャリアプラン策定へのヒントを紹介しましょう。
鵜子さんの経営する桜リクルート社はマレーシアに進出する日本企業を主な顧客とする人材紹介会社です。日本企業の進出が非常に活発になった今では、人材紹介以前のマレーシア進出のコンサルテーション業務も行っています。紹介する人材はマレーシア人。14年前の創業時にどのようにしてマレーシア人の人材データベースを構築したのかというと、それを持っている現地企業と提携し、鵜子さんは日本企業への営業機能を務めることから始めたのでした。今ではマレーシア人データベースは自社でお持ちです。
熱心に講演に耳を傾ける学生 |
京都出身でそれまで海外経験のなかった鵜子さんですが、いつかは海外で暮らしたいという夢は持っていました。ではなぜマレーシアなのかが疑問になりますが、ビジネスを開始するにあたり東南アジア数カ国を回った結果、マレーシアで起業するのが最も合理的と判断したからとのことでした。すなわち、親日国であり、治安も良く、物価も安い。そして英語が通じるからです。マレーシアは住んでからますます好きになった、と。
人口の減少する日本だけを相手にしていては衰退必至であるため、実に1600社もの日本企業がマレーシアに進出しています。鵜子さんの顧客には、伊勢丹、ユニクロ、無印良品、ヤマト運輸、ダイソーといった有名企業から、無名の中小企業までが名を連ねています。特に小売業では、マレーシア人大学生をリクルートして、日本店舗で研修を受けさせ、現地の店長候補として仕事に当たらせるケースも出始めているとのことでした。
クアラルンプールのユニクロ |
東南アジアの人は、欧米のブランドと同様にあるいはそれ以上に日本のブランドをカッコいいと思ってくれているので日本企業にはチャンスが十分あるのです。鵜子さん曰く「名古屋に転勤するのと同じノリで、再来週からクアラルンプールに行ってくれ、と言われる時代」。
ちなみにマレーシアでの就労ビザを日本人が取得できる条件は、(1)27歳以上(IT関連だけは23歳以上)、(2)大学・短大・専門学校卒以上、(3)専門分野での5年以上の経験です。この条件を満たせば、5000リンギット以上の月給を得ることができます。
5000リンギットというのは15万円相当ですが、物価水準を考えると、日本で45万円程度をもらう暮らしはできます。6000リンギットもらえれば、さらに余裕が出てきます。つまり基礎的な英語力があれば、という条件はつきますが、日本企業からの派遣に限らず、30歳少し前から10年ほどマレーシアで働くという選択肢も日本人にはあるのです。東南アジアでの実務経験を買ってくれる日本企業もこれからは増えていくからという事情もあります。
シンガポールでは私は旧友に再会したのですが、彼も旅行ウェブメディア企業の経営者です。しかも現地から日本に住む2人のプログラマーと3人の編集スタッフ、それと60人のライターとコミュニケーションを取りながら仕事をしていました。インターネットを駆使すればこういう仕事の仕方も可能なわけです。そしてシンガポールで彼が仕事をする理由は、「子どもに英語と中国語を身につけさせたいから」でした。
マレーシアでの日々の暮らしには地元色は残ります。今回もクアラルンプールから少し郊外に出ると英語が通じなくなりました。その一方で、都市部でのビジネス面のグローバル化はいやおうなく進展しています。たとえばショッピングモールに行くと、それがクアラルンプールなのかシンガポールなのか東京なのかわからなくなります。
シンガポールのショッピングモール |
そのような世の中ですから、自分のことあるいは子どものことを考えて、戦略的に生きている人は少なくはないのです。若い世代の日本人が、どうキャリアを作るか考える時には、長い時間のみならず、広い空間も意識したほうが良いよ、という時代にさしかかりつつあるのです。
そんなことを肌で感じた参加学生も少なからずいました。彼らの何人かがつぎなる行動を起こし、自分のキャリアを豊かなものにしてくれれば、研修の意義が本当に出てくるのですが、あとは諸君に期待です。
[佐々木裕一]
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