2017/04/13

「盛りだくさんのマレーシア研修、どうだった?」(後編)


(トケコミ4ゼミ合同海外研修報告その3

「感受性豊かな時期に海外へ!」をかけ声に、2月末に、
松永/中村/光岡/佐々木の4ゼミが合同でマレーシアとシンガポールへ研修に行ってきました(8日間)。


前半は、クアラルンプールにある Asia Pacific University of Technology and Innovationで午前に英語研修を受け、午後は研究テーマにしたがって街中を視察。5日目は、トケコミへのマレーシアからの留学生実家がある同国南端のジョホールバルへ移動し、ご両親からの大歓待を中華料理店で受けました。その後、陸路でシンガポールに入り、半日だけ観光をして帰国という濃密なプログラム。前回に続き、日本で留守番をしていた教員・松永が、参加学生らの生々しい声をもとにレポートします。
 
 ※(前編)はこちら


◆ことばをめぐって
 本研修の目的の一つは、マレーシアという多言語社会における「英語」、つまり母語ではなく共通語としての英語を学ぶことにありました。キャンパスでの生活や街でのフィールドワークを通して、「ことば」について考えさせられたというレポートを紹介します。


「英語」の多様性
 これまで自分たちが習ってきたのは、アメリカやイギリス、オーストラリアなど、英語を母語とする人々の話す言葉であった。しかし、世界には様々な「英語」がある!そう悟ったという報告が少なくありません。
 世界約110カ国から集まった学生の学ぶAPUのキャンパスで耳にしたのは、ナイジェリア人の英語、スペイン人の英語、ロシア人の英語、パキスタン人の英語など、非常にバリエーションに富んだ「英語」で、新鮮だったといいます。
 自由時間を使って、マレーシアで活躍する日本の芸人さんに会いに行ったY.Mさん(1年)は、「英語」でコメディアンショーを鑑賞したときの感想をこう綴っています。

マレーシアは色んな民族の人たちが集まっていて、一律に英語といっても、インド系、マレー系、中華系などエスニシティがちがうだけで全く別の言語のように感じた。

 世界の人とコミュニケーションをとるには、多様な英語を聞き分けることが必要だという気づきは、自分たちもまた、多少訛っていてもいい、何より英語を使うことが大事なのだという実感にもつながっていったようです。

 
【写真3 APUでの英語学習の様子:オランダ系、インド系、マレー系など先生も多様性に満ちていた


訛っても構わない。
伝えようとすること、それがイチバン大事
 speakingに重点をおいたAPUの授業で英語を使うことの楽しさを学んだ学生たちは、キャンパス外で、現地の人々に積極的に話しかけるよう努めたそうです。なかでも、タクシードライバーとの対話で自信をつけたという報告が複数寄せられました。
 タクシーを利用するたび、外国出身の移民ドライバーとの会話を楽しんだというW.Hさん(2年)は、「昼間は運転手、夜間は飛行機の整備士をしているという勤勉なおじさん」が、携帯のアプリを使って一生懸命日本語で話しかけてくれたことが忘れられないといいます。「日本人は優しく、まじめで尊敬している。お金もあるし、まじめなのに、英語を話せないのは不思議だ」という彼の言葉に納得しつつ、まずは相手に伝えたいという気持ちを出発点に言語を習得していこう、と決意しました。
 非言語コミュニケーションの大切さに気づいたのはM.F2年)さんです。

Thank you」は世界中どこでも通じる感謝のことばである。そのためわたしは、今回の研修でそのことばをいつどんなときでも使った。しかし、本当に心から感謝しているとき「Thank you」とただ伝えるだけではなにか物足りない感じがした。日本ではおじぎや手を合わせるなどのジェスチャーや、食事の際に使える「ありがとう」に代わる「いただきます」や「ごちそうさまでした」があるが、今回は感謝のきもちを「Thank you」のみでしか表現できなかった。
APUの授業では、「Memory」「Focus」「Gesture」この3つが英語を話すうえで重要だと学んだ。今回の貴重な経験を生かして、これから外国人とコミュニケーションをとる際には英語(ことば)以外でのコミュニケーション方法も試していきたいと感じた

「伝えたいことを伝えられない」という実体験は、今後の学習動機につながる貴重なものだと思います。「コミュニケーション」を学ぶ学生たちのこれからの飛躍が楽しみです。


◆留学生とともにアジアを歩く
 参加学生33名のうち3名は、中国、台湾、マレーシアからの留学生でした。彼らと一緒にマレーシアを歩くことで、旅は一層実りあるものになりました。

仲間を連れて母国へ
 マレーシア出身の学生(2J.Tさん)は、常にみんなの様子を気遣い、自由行動の指南役をつとめたり、家族との交流会をアレンジしてくれたりと大活躍の功労賞。そんな彼は、今回の旅を次のように振り返っています。

マレーシアから来日し、今年で四年目になった。これまで、マレーシアに帰国するときはいつも一人。日本に戻ってくるときも、もちろん一人だった。だから、東経大の友人と一緒にマレーシアに行き、また皆で日本に帰って来られた今回の旅行については「感謝」という言葉しか思いつかない。

 現地で我々トケコミ派遣団を大歓待してくださったJさんの家族、親族の皆さんは、彼が多くの友人に囲まれ、流暢な日本語で仲間を率いる姿に目を細められたそうです。その光景は、他の学生たちの心を打ち、異国・日本で暮らす留学生への尊敬と、彼らの存在がトケコミの国際色を豊かにしてくれることへの感謝の念を新たにする経験となりました。帰国後、多くの学生が「今度は私たちが、留学生に日本を案内したい!」と口にし、意気込んでいます。

  
 

 【写真4 ジョホールバルでの交流会:対岸のシンガポールを望みながら海鮮中心の中華料理を堪能!


中国語でつながる世界
 Jさんの家族をはじめ、中華系住民が人口の約24%を占めるマレーシアと、約74%のシンガポールで活躍したのは、中国(上海)、台湾出身の学生さんでした。現地の人に道を訊ねたり、Jさん一家との交流会で通訳を務めたりと、中国語を駆使して旅をサポートしてくれました。そのような貢献の仕方、能力発揮の可能性があるのだと初めて実感し、もっと海外を旅したいという意欲が湧いてきたY.Sさん(3年)は「知らない自分を発見した」といいます。
 「APUキャンパスでは英語、トケコミの日本人学生とは日本語、中華系の人々とは中国語で話す」トリリンガルな体験がとても面白かったと振り返るのはK.Cさん(3年)。その「強み」をもっと伸ばして、将来に活かしてほしいと祈っています。
 中華系の留学生が活躍した今回の研修で、学生たちは「英語だけが共通語ではない」こともまた学んだはずです。マレーシアは文化の多様性を知るうえで興味深い国であること、そして実際に研修の中身を作るのは参加学生一人一人であること。企画担当者としての深い学びでした。
 
 
【写真5 帰国直後の成田空港にて:フライト7時間遅れのアクシデントに関わらず、みんなこの笑顔!


◆さあ、新たな旅へ
 旅の終わりは、新たな日常の始まりでもあります。

今回の旅の多くの場面で、異文化を感じました。私たちの常識も彼らにとっては非常識。そんな風に考えられることは発想力も豊かになるような気がします。初めてのマレーシアでは、単語を合わせただけの私の拙い英語を真剣に聞いてくれる優しい人に出会ったり、夜景がきれいに見えるバーに行ったらバーデンダーに笑われたり、帰りの電車の時刻が表示されてなくて不安になったり、レストランの店員さんに鶴の折り方を教えることになったり、乗るはずの飛行機が大幅に遅れて空港で眠ったり、新しい体験がたくさんありました。この体験はこれからの私にきっと何かをもたらしてくれるのではないかと思います。今回、就職活動が始まる間近に海外に行くことに不安を覚えていましたが、行ってよかったと、本当に思っています。

そう、R.Sさん(3年)がまとめるように、自分の目で見たこと、肌で感じたことの先にある「何か」を掴みにいってほしい。さあ、新たな旅へ。そしてまた、トケコミ生の暮らす東京こそ世界有数の国際都市です。足元にひろがる異文化に満ちたフィールドで、本年度も学び多き日常を生きていきましょう。



※参加学生による報告会を、412日に開催しました。



 
 次回は18日の予定です。関心のある東経大生は是非会場へ!

 418日(火)E2015号館2階)12:2012:35

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