2017年5月14日日曜日

学問のミカタ:スポーツを通して自分を知る





 コミュニケーション学部で演習と身体表現ワークショップ「コーチング」を担当している遠藤愛です.今回の「学問のミカタ」は,“スポーツを通した学び”がテーマです.



 私たちは,小学校から既に明らかにされている正解の数を競う場面が多々ありますが,スポーツでは個々の選手によって身につけるべき動きや技術が異なります.競技者としてスポーツに打ち込む面白さの一つは,自分独自のわざを探究し,創り上げていくことです.アスリートは,毎日,毎日,トレーニングをしながら自分独自の正解を探し,それを習得した者が勝ち残っていける世界に生きています.その世界で指導者の役割は,選手が自分の体格,性格,持っている能力を最大限に生かした独自の技術を築く過程において,客観的に評価し,ヒントを与えて導いていくことです.そのために,指導者は選手の特徴を理解した上で目指すべき方向性を示し,目標を達成するための具体的な手段を示して実行させなくてはなりません.私もかつて指導者とともに“自分の知らない自分”との出会いを通して自分の持つ可能性に気づき,勝負の世界に挑戦し続けていました.スポーツを通して協調性や自己を律することを学ぶのと同時に,自分と向き合い,自己に対する理解を深めることも大切な学びの一つといえるでしょう.


1989年高3夏のインターハイ決勝,相手は伊達公子さんでした.撮影:真野博正氏

 これまで私のゼミでは,伝えること,自分を表現することなどをテーマとしてきましたが,今年度は「己を知ること」を選びました.学生には,幼児期からの運動経験を整理し,運動を通して何を学んだのか,運動経験が今日の自分にどのような影響を及ぼしているのか,さらに今後は,現代社会の中で自分の身体とどのように付き合っていくのかなどについて考えてみようと提案しました.私は,世界レベルで活躍したテニス選手達は,どのような運動遊びの経験があるのか,それがプレーにどのような影響を及ぼしているのかについて研究しています.調査した結果,トッププレーヤーは幼児期から様々な運動を経験し,運動を通して実によく自分のことを理解しています.走る,跳ぶ,投げる,登る,漕ぐなどの様々な基礎的な運動において,自分は何が強くて何が弱いのか,フィジカルとメンタルおける自分の長所・短所をよく理解し,長所を生かして短所を補ったプレースタイルを習得しています.
 
 今,日本では2020東京オリンピックに向けてスポーツ庁も設置され,スポーツエリートに対する関心は高くなっています.ネットなどを通してサッカー,バスケットボール,テニス,野球,スケートなど世界トップレベルのスポーツを見て,ワクワクするようなスーパープレーを目にする機会も格段に増えました.ただ,私はやっぱりスポーツはヒトの運動から発生し,“普通の人々”の生活の中に根ざしていくものだと思います.私たちが日頃行っている何気ない動きの原点を見つめ,スポーツをより身近に感じて欲しい,スポーツを通して自分の内面と向き合い,自分自身についてさらに理解を深めて欲しいと考えています.










 (1996年,神尾米選手と) 


身体表現ワークショップではプロスポーツカメラマンの真野博正氏に”写真で表現すること”について講義していただきました.写真は全て真野氏の作品です.



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