「メディア好き」の集まるコミュニケーション学部には、実際に作品を制作するワークショップに加え、映画をはじめとした様々なコンテンツを鑑賞し議論する講義が豊富で、毎年多くの学生が受講しています。
その一つ「表現と批評」は、学部創設の1995年以来開講され続けてきた名物講義です。入場料の高さゆえ映画館を敬遠しがちな学生たちに、大きなスクリーンで名画を観る機会を提供したい。そんな思いで設置されたのだと、同講義を20年以上担当されてきた桜井哲夫先生は振り返ります。
(2015年度「表現と批評」の紹介記事はこちら。)
毎回一本の映画を観て、批評文を書く。積み重ねによって文章表現力が鍛えられるだけでなく、心を動かされる映画との出会いは、生涯の財産となるでしょう。
さらに同講義では、受講生による投票ランキングも公表されています。以下、桜井先生のレポートをみてみましょう。じゃじゃん!
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7月17日に無事、講義を締めくくり、20年にわたる講義が終了となった「表現と批評」(桜井哲夫担当)ですが、そのベスト3投票の結果がまとまりましたので、ご報告します。
表現と批評 2017−3 My BEST 3
上映作品
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1位得票数
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2位得票数
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3位得票数
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タイタニック(1997)
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58
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19
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18
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ショーシャンクの空に(1994)
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28
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25
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9
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時をかける少女(2006)
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17
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21
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23
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バンテージポイント(2008)
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11
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13
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17
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言の葉の庭(2013)
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8
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10
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15
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ボーン・アイデンティティ(2002)
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8
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4
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14
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シン・ゴジラ(2016)
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7
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21
|
16
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雨に唄えば(1952)
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7
|
7
|
4
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舟を編む(2013)
|
5
|
10
|
9
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ラブソングができるまで(2007)
|
4
|
6
|
5
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じゃりン子チエ(1981)
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4
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4
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5
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帰ってきたヒトラー(2015)
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3
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8
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11
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永い言い訳(2016)
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3
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8
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8
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Shall we ダンス?(1996)
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2
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5
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8
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たそがれ清兵衛(2002)
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0
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4
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4
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純粋に1位投票数だけで決めると、以上のような結果となりますが、ボルダ・ルールという決定方法では違ってきます。ボルダ方式では、この場合1位の得点を3、2位の得点を2、3位の得点を1、とします。その上で得点合計によって順位を決めるのです(参照:坂井豊貴『多数決を疑う』、岩波新書、2015年)。
すると、どうなるか。以下のように変化します。
「シン・ゴジラ」は、1位投票数だけでは、7位でしたが、2位、3位の投票数が多かったので、その点数を加えると4位に躍進しています。
1、タイタニック(1997)230点
2、ショーシャンクの空に(1994) 143点
3、時をかける少女(2006) 116点
4、シン・ゴジラ(2016) 79点
5、バンテージポイント(2008)76点
6、言の葉の庭(2013) 59点
7、ボーン・アイデンティティ(2002) 46点
8、舟を編む(2013) 44点
9、雨に唄えば(1952) 39点
10、帰ってきたヒトラー(2015) 36点
11、永い言い訳(2016) 33点
12、ラブソングができるまで(2007)29点
13、じゃりン子チエ(1981)25点
14、Shall we ダンス?(1996) 24点
15、たそがれ清兵衛(2002)12点
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60年以上前のミュージカルから、昨夏話題になったばかりのSFまで!
この中に皆さんが知っている作品はいくつありますか。
ランキングにどんな感想を抱かれますか。
投票結果の講評とともに、この15本をラインナップされた観点について桜井先生に伺いたいところですが、もとより作品を評価するということは、コミュニケーションの始まりですね。
「私はこれが好き。君は?」
「なぜ?」
直接問いかけはしなくても、批評とは、人とかかわり、つながる手段なのだと思います。映画を観れば、誰かと話したくなってくる。
ビデオやPCだけでなく、スマホやタブレットの登場で、映画をいつどこでも「一人で」観ることが一般化しつつある時代。講義という固定された時間・空間において「集団で」映画を鑑賞すること自体、受講生にとって普段とは異なるメディア経験となり、記憶に残る名画との出会いをもたらしてきたことでしょう。
桜井先生、長年のご担当お疲れ様でした。コミ部の名物講義「表現と批評」はこれにて一旦閉幕ですが、その精神と蓄積は今後も様々な講義、ワークショップで受け継がれていくはず(受け継ぎたい!)です。
さあ、いざ夏休み。皆さんが一つでも良い映画に巡り会い、心豊かに過ごされますように。
(松永智子)
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