2019/12/10

聖地巡礼って何?ーコンテンツツーリズム学会@TKU


 いよいよ師走になりました。我がトケコムでは、先週無事に卒業論文を提出した学生たちの、卒業旅行計画の楽しい話題を耳にします。「旅行」といえば…

 先週末、本学にてコンテンツツーリズム学会 論文発表大会が開催されました。同学会の常務理事を務めるトケコム教員の中村忠司先生よりご報告いただきましたので、以下お届けします。

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 1130日(土)2号館にてコンテンツツーリズム学会 第7回 論文発表大会が開催されました。
コンテンツツーリズム学会 論文発表大会

コンテンツツーリズムとは、地域に「コンテンツを通じて醸成された地域固有のイメージ」としての「物語性」「テーマ性」を付加し、その物語性を観光資源として活用することとされます。対象となるコンテンツは映画・アニメ・ゲーム・テレビドラマ・文学・音楽などで、その物語の舞台となった土地を訪れます。アニメの舞台地訪問は「アニメ聖地巡礼」と呼ばれ、その場所には世界中から若い日本アニメのファンが訪れます。『君の名は。』の舞台地となった岐阜県・飛騨古川や『ガールズ&パンツァー』の茨城県・大洗町、『SLUM DUNK』の神奈川県・江ノ電鎌倉高校前踏切は有名ですね。海外ではドラマ『冬のソナタ』で韓国旅行ブームが起きて、たくさんの日本人女性旅行者がソウルだけでなく春川(チュンチョン)など地方都市を訪れました。このようにコンテンツツーリズムには舞台地となることで、今まで観光地として認識されていなかった場所に多くの観光客を集めるという特徴があります。
コンテンツツーリズム学会ホームページ http://contentstourism.com/index.html


アニメ映画『君の名は。』の舞台地。
四谷 須賀神社の階段(筆者撮影)

映画『Love Letter』の舞台地。
韓国でブームになった冬の小樽(筆者撮影)

今回の発表大会は7回目で、大阪・福岡・静岡と地方での大会に続き、20193月に学会が学術研究団体の指定を受けてから最初の大会となりました。大会では最初に柴内学部長が開催校挨拶として、大学の紹介とメディアや文化を研究対象とするコミュニケーション学部とコンテンツツーリズムの親和性について話しました。続いて学会会長の法政大学大学院増淵敏之教授が開会挨拶をされました。
 
開催校挨拶をする柴内学部長


開会挨拶をする増淵敏之会長

 特別講演は立教大学観光学部石橋正孝准教授が「地霊(ゲニウス・ロキ)としてのシャーロック・ホームズ」というタイトルで講演されました。シャーロック・ホームズはイギリスのコナン・ドイルによって書かれたシリーズ作品の主人公で、作品は1887年の『緋色の研究』から1927年の『シャーロック・ホームズの事件簿』まで長篇4篇と短篇56篇があります。世界で最も有名な架空の探偵として知られ、2010年にはBBC放送が『SHERLOCK』としてスマートフォンやインターネットを駆使して事件を解決に導く現代版キャラクターとして復活させました。2012年にはCBC放送が『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』としてニューヨークを舞台にドラマで活躍させています。またフジテレビでは2019年秋から放送の『シャーロック』で東京を舞台にディーン・フジオカが犯罪コンサルタントとして活躍するドラマのタイトルに象徴的に使われています。講演は、作者論として「モデル作者」から「キャラクター」へと論を展開され、作品的受容とコンテンツ的受容の違い、作者と読者の戦いと非常に興味深い内容でした。個人的には、コナン・ドイルとディケンズの対比がなるほどと思い面白かったです。

 
論文発表の様子

 休憩を挟み2会場で12本の発表が行われました。タイトルは以下の通りです。
・「アニメ聖地巡礼者の特徴」
・「スポーツのコンテンツ化によるコンテンツツーリズムへの接近 地域資源活用イベントの活用事例から」
・「アキバのコンテンツツーリズムとマーケティング3.0
・「聖地巡礼による中国観光客の動向に関する一考察 SLAM DUNK』の分析を通して」
・「アニメの聖地巡礼を活用した地方自治体のディスティネーション・マーケティングに関する一考察 埼玉県の事例から」
・「日本映画を活用した地域資源創出プロセスにおける地域組織の役割」
・「地域創生とコンテンツツーリズム」
・「コンテンツ『温泉むすめ』の展開とその可能性 再話化とツーリズム」
・「コンテンツツーリズムの新たな可能性 オリジナル・ビデオによる誘発した朝里観光を事例に」
・「アニメ『ゆるキャン』が 地域に与えた影響について」
・「アニメファンの聖地巡礼における意識と行動特徴に関する研究」
・「コンテンツツーリズムと婚活ツーリズムの相乗的展開可能性に関する考察」
 発表内容は、論文や研究ノートとして『コンテンツツーリズム学会論文集』に掲載予定です。

 本校の過去の卒業論文タイトルを見るとコンテンツツーリズムをテーマとした論文がいくつもあります。中村忠司ゼミ(観光学)ではニューツーリズムの中でも「フードツーリズム」や「コンテンツツーリズム」に力を入れています。この分野に興味を持つ人は、どうぞ話を聞きに来てください。
(中村忠司)


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