2018/06/03

2017年度ベストティーチャー 大岩直人さん

2017年度ベストティーチャー賞!?

大岩です。「2017年度のベストティーチャーに選ばれましたよ〜」と伺った時、さては学生のみなさん、ワタクシのことを2016年度までいらっしゃった関沢先生と勘違いして投票したのでは? と思いました。関沢先生が担当されていた広告論やコミュニケーション戦略論などの講義科目を引き継がせていただいていたので。関沢先生は2016年度のベストティーチャーでした。

私は2017年に本学に着任したばかりです。しかも前職は広告会社勤務。教育者としてはまったくの駆け出しです。そんな私が初年度からベストティーチャー賞なんて、こういうのをビギナーズ・ラックというのでしょうか。

選んでいただいた学生のみなさん、ほんとうにありがとうございました! 1年間自分なりに試行錯誤してきた甲斐があったとしみじみ思います。今、ちょっと涙が出そうになりながらこの文章を書いてます。うるうる。

心がけていたことはただひとつ。それは、自分がみなさんと同じ20歳前後の大学生だったらどんな授業やゼミナールを体験したいだろうか、ということ。学びたいことがすでにハッキリとしているのなら、専門性の高いコンテンツをたっぷり吸収すればいいのです。そういう方には私の専門知識をまるごとそのままお伝えします。でも、残念ながら自分が大学の12年生の頃はまだその段階には到達していなかったように思います。どんな学問に対してもいまひとつ「学び方自体がよくわからなかった」ように思います。

「学び方自体を学ぶ」……これを、今度は教える側になって実践してみようと自分なりのメソッド開発めいたことを考案してみたのですが、それは、ひと言で言えば、「imagine of opposite」(いつも正反対のことを考える)ということ。例えばこんなふうに。

みなさん、いきなり「クリエイティブな面白い文章を書いてみましょう」と言われてもどうしたらいいかわかりませんよね? だいたいが「面白い文章」という概念が曖昧過ぎます。で、そういう時、まずは「つまらない文章」を書いてみる。徹底的につまらない文章を徹底的に正しい日本語で書いてみる。で、その作業の過程で文章をつまらなくする要因がなんなのか、自分なりにロジカルに解析してみるのです。同じように「つまらない写真」を撮ってみる。あるいはネット上から探し出す。その写真のどこがつまらないのかを解析してみる。その後に、徹底的につまらない写真を何枚か組み合わせることによって面白くならないかと考えてみる。あるいは、徹底的につまらない写真にキャプションをつけて、そのコピーワークだけで面白くしてみる。……なんのことはない、これは編集力を養うためのトレーニングなんですが、「正反対のことを考える」ことでコントラストがハッキリしてきますよね。

いつも180度違った視角からモノゴトを見つめてみる。そうすることでどんなテーマについても常識を疑うクセを付ける。……私がやろうとしていることはたぶんそういうことなのではないかと思います。例えば、広告論の授業。広告コミュニケーションの根幹であるブランディングについて常識的な説明をした後、その舌の根も乾かないうちに、正反対の「敢えてブランディングしない」手法についていくつか実例を挙げてみる。ゼミナールでの表現系カリキュラムでは、全体をひと言でうまくまとめあげる訓練をする一方、徹底的にディテールの解像度を上げる訓練をする。……私はひねくれ者なのでしょうか? 少なくともあまのじゃくであることに間違いはありません。

90分の授業は発想力を刺激することに使い切ります。そしてアウトプット先行です。まずは自分なりに表現してみて、それを晒して、他の人の考えたアイデアの方が良ければその人の才能にネッチリと嫉妬して、よし、自分ももっといろんなことを知らなくちゃ、答えはひとつじゃないんだな、と思ったところからインプットが始まります。……これは尊敬する関沢先生に教えてもらったやり方です。

学生のみなさんとは、特にゼミ生の方とは4年間キッチリお付き合いをしたいと願っています。そしてその間、私をトランプのジョーカーのように使ってもらえたらと思います。ジョーカーは道化師であり、時折「種も仕掛けもある」マジックを使います。ジョーカーはいろんな役割を兼ねられます。代役を務めることができます。でも、ワイルドカードは最後まで持っていたらダメです。うまく私を利用して、最後に私を捨てて、鮮やかに大学4年間の学びの生活をアガってください。





みなさん、1限は眠いですよね? 5限はバイトに行かないと、ですよね? 自分の学生時代もそうでしたから、その眠さ、あのかったるさ、よくわかります。(ちなみに私の担当する授業はなぜか1限と5限が多いです、あしからず)私が一方的に発信しているだけではますますみなさんの眠気は増すばかりでしょう。よし、今日も朝の9時に来た甲斐があったとみなさんが思えるようなカリキュラムを、これからもいろいろ考えていきたいと思います。ですから、みなさんも、大学の授業というのは学生と教員がいっしょになって創りあげるものだという認識を決して忘れないでくださいね。

最後に。畑山博さんが書いた「教師 宮沢賢治のしごと」より、以下の文章を引用させてください。

「学校の教師という仕事は、それをほんとうに誠実に心を賭けてやったら、音楽とか絵とかいうような芸術より、もっとすばらしい芸術行為になるのだと、私は思っています。

こんな授業ができたら理想ですね。精進したいと思います。

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