2018/07/06

【学問のミカタ】アスリートは勝負をどう学ぶのか

スポーツコーチング担当の遠藤愛です。そして、恥ずかしながら元プロテニスプレーヤーです。

サッカー日本代表のベルギー戦、惜しかったですね、本当に。あの試合の後、日本は、勝つために何が足りなかったんだろう、何が必要だったんだろう、どこで勝敗が切り替わったんだろう、多くの人がそんな疑問を抱いたと思います。私も一人のファンとしてあの試合を見ていて、勝負の難しさと怖さを思い出しました。

そこで、今回の学問のミカタは、アスリートの視点から勝負をどのように学ぶのかについて書くことにしました。

アスリート、つまり競技に打ち込み、勝負の世界で生きていく選手は、技術や戦術を身につけ、体力、精神力の強化とともに、勝負とは何かを理解し、それを日常として楽しめなくてはなりません。技術、戦術、体力はトレーニングを通して習得できますが、勝負とは何かを学ぶこと、あるいは選手に教えることはとても難しいものです。

試合は、大きく分けて、攻める時、守る時、そして時機を待つ時の3つに分けられます。中には、“生まれながらの勝負師”と感じさせる選手がいますが、私は、勝負に出る時、勝負をかける時を鋭敏に感じ取れる感性を、子どもの時から徹底的に磨いたような気がします。

どうやって??

私の場合は、“実戦形式の練習と試合を繰り返すこと”でした。ある程度、技術的な基礎が固まった小学生の高学年頃から徐々に練習試合を増やし、中学後半からは毎日、色々な相手を見つけて試合をしていました。練習の時から徹底していた注意点は3つ。

・ 常にプレーしている自分とは違うもう一人の自分を作り、外からプレーを見つめ、自分と対話すること。
・ 相手や自分の何かが変わった時、つまり入らなかったボールが入るようになる、ミスが増えてくる、自分や相手が疲れたかな、、など、ふと気づく直感を大切にすること。
そして、、、
・ 最後の最後の瞬間まで、勝ち切るまで決して気持ちを緩めないこと。
以上の3点に加えて、「練習でできないことは試合でできない。でも、試合では、練習ではしないミスをする」ことを心に刻んで練習していました。

競技引退後、さまざまな選手と話すようになりました。彼らの多くは、子供の時から勝負に親しみ、楽しんでいるケースが多い。実際に、今年度の身体表現WSで指導して下さった佐伯美穂プロは、小学生の時から様々な練習に勝負を取り入れていたそうです。授業でも、ウォーミングアップから学生たちを競わせました。競うこと、勝敗を決めることを日常的に体験させる練習は、同世代、同レベルの仲間に恵まれた環境ゆえに実現できる方法です。
本来、勝負に対する感覚は選手自身が自分で気づき、会得するものですが、私たちのように指導者や周りが材料やきっかけを整えることによって身につけることも可能だと思います。


身体表現ワークショップでの佐伯プロと学生たち。アップから鍛えられました。

さて、ワールドカップは終盤に入りました。テニスのウインブルドン、自転車のツールドフランス、メジャーリーグでは大谷選手の復帰と、私たちは世界中で開催されている様々なスポーツイベントを見ることができます。

今日のスポーツ観戦は、技術が進歩し、視聴者や観客が見たい箇所を何度でも繰り返し見られるだけではなく、試合の判定にも録画再生技術が用いられるようになりました。一流選手の技術を抽出して分析し、比較検討することも可能です。でも、スポーツに携わるものとしては、勝敗を決める一瞬だけは是非、起こる“その時”に見て頂きたい。いつ起きるかわからないその一瞬を作り出し、感じ取り、モノにするためにアスリートは努力し、戦っています。 “その時”の緊張感と興奮を選手や他の観客と共有すること、それがスポーツを見ることの醍醐味です。勝敗を分ける“一瞬”を敏感に察知するアスリートの感性にも是非、注目してください。



鈴木貴男さんは身体表現ワークショップで運動連鎖を生かしたサービスを指導してくれました。



ジュニア育成の最前線で指導している吉田友佳さん。私たちの時代とは違う“今”のテニスを指導してくれました。

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