海外挑戦記①
-7人制サッカー・ソサイチでタイ、イタリアへ-
語学留学ではなく海外遠征
コミュニケーション学部2年、松永ゼミの小井戸悠磨です。私は大学入学後に7人制サッカー「ソサイチ」を始め、日本選抜メンバーとして昨年はタイ、今年はイタリアに遠征しました。その経験をもとに、「海外挑戦」することの大切さや面白さを紹介したいと思います。私の周りの友人たちは、海外といえば「語学留学」に視点を置いていますが、私の視点は「海外挑戦」です。
ソサイチとは
そもそも皆さんは「ソサイチ」という7人制サッカーを知っていますか? 仲間を育むことを目的としたアマチュアプレイヤー向けサッカーで、ポルトガル語の「社会・社交的・共同体」等を意味する「SOCIETY(ソサエティ)」が語源とされています。おそらく、聞いたこともないという人がほとんどではないでしょうか。実は、ずっとサッカーをやっていた私でさえも、大学一年の夏にソサイチを始めるまで、存在自体知らなかったのです。
本気でサッカーをしたい
ソサイチと出会うきっかけは、大学生になって最初の夏休みに、あるフットサル場でアルバイトを始めたことです。いろいろ悩んだ末、本学サッカー部への入部を断念し、自分でフットサルサークルを立ち上げたものの、様々な壁にぶち当たり、悶々としていた当時の私は、同僚である職場のスタッフに「本気でサッカーをやれるところはないか」と相談しました。その時に教えてもらったのがソサイチでした。しかも、翌9月に日本選抜メンバーのセレクションがあり、選ばれれば、国際大会「タイ・インターナショナルカップ」に参加できるというのです。私は即、挑戦を決めました。
壁を越えるために
タイ遠征は、関東と関西、それぞれ一チームずつ結成され、ともに国際試合に出場することができます。私は、関西のセレクションを受けました。なぜ関西だったのか。東京に住んでいる私なら、関東でセレクションを受けるのが自然でしょう。しかし、関東の方がレベルが高いという情報を耳にし、受けるなら1%でも合格可能性が高い方がいいと思い、関西を選んだのです。今振り返ると、当時は、大学入学以来いろいろ中途半端になっている自分が嫌で、本当に追い込まれていました。あの時挑戦しなかったら、今の自分はいなかったと思います。
初めての海外、初めての国際試合
無事にセレクションを通過した私は、二度の調整練習を経て、生まれて初めての海外、タイはバンコクへと旅立ちました。フライトの疲労に加え、バンコクの過酷な気候と慣れないタイ料理は予想以上に体に堪え、それでも短時間で調整してベストな状態に持っていかなければならない海外遠征の厳しさを痛感しました。一方で、日の丸を付けて海外の選手と戦うという今まで経験したことのない高揚感はやはり、印象的でした。結果は、まずまず。予選2試合を2勝して決勝まで進み、1-1からのPK戦で惜しくも敗れ、準優勝で大会を終えました。たった三日間とは思えないほどの濃密なタイ遠征は、わたしに全然やれる!という自信と、もっと上を目指したいという欲を与えてくれました。また、タイは、サッカー的に見れば発展途上国ですが、設備は充実しているので、これからレベルが上がっていくと感じました。
一年生で挑戦して良かった
タイに行ったことで、次はサッカーの強豪国があるヨーロッパや南米に行きたい、様々な国でサッカーしてみたいと強く思うようになりました。それだけでなく、日本選抜のメンバーはほとんどが私より年上の社会人で、チームメイトとして、彼らから学ぶことがたくさんありました。そして、このかけがえのない経験を絶対に自分の強みにしよう、自分の可能性や選択肢を広げていこうと決意しました。何より、一年生という、早い時期に経験できて良かったです。それまでは、迷いながら、自分の人生について割と曖昧に選択していたこともありましたが、遠征以後は、自信や覚悟を持って選択できるようになりました。挑戦することの意義を身を持って経験できた遠征は今のわたしの原点であり、財産です。
【写真2 バンコク最後の夜に出かけたナイトマーケットの風景】
サッカーの本場、イタリアへ
タイ遠征から4ヶ月後の2018年3月。私はイタリア遠征の関東選抜セレクションに挑み、通過することができました。サッカーの本場、ヨーロッパに挑戦したいという思いを温めてきたので、今回一つ、その夢が叶いました。ただ、ハードルはずっと高かったです。まずは、移動距離の長さ(深夜に東京を発ち、ドーハ経由でヴェネチアに入り、試合会場のチェゼーナまではバス移動)と、時差の大きさ(7時間)。遠征初参加者として先輩を頼っていれば良かったタイ遠征とは異なり、イタリアでは、経験者として、チームを引っ張る立場で臨むことが期待されました。国内トレーニングも2回しかないだけでなく、タイ遠征では13人いたメンバーが、今回は10人。通常の大会では、ソサイチ専用のローバウンドの5号球を使いますが、参加した「Finali Scudetto LNCA 2018」(イタリアのアマチュアソサイチ全国大会)ではサッカーボールの5号球が指定されていて、それもまた難しさの一つでした。
サッカー文化根付く、イタリア
予選は全5チームの総当たりリーグ戦で、上位2チームが決勝トーナメントに進出できます。結果は、1勝1敗2分で、予選敗退に終わりました。今、試合を振り返ると、決して勝てない相手ではなく、決勝トーナメントにも十分進出できたと思います。では何が足りなかったのか。イタリアのチームは、サッカーとは何かを私たちより深く理解していました。
私は全試合DFでフル出場しましたが、力の差を痛いほど感じました。まず、体格が全然違いました。ほとんどがラグビー選手みたいにがっちりしていて、そもそもの身体能力が高いです。また、納得のいかない審判の判定に対してチーム全体で審判に詰め寄って、1つ1つのプレーに対する激しさが、我々とは全然違いました。さらに彼らは、ゴールを決めた時や試合に勝った時はお祭り騒ぎで、負けた時はチームで大喧嘩して、でも、試合が終われば結果がどうであれ握手を交わし合って、リスペクトします。アマチュアスポーツでも、ここまで熱くなれるんだ…!その光景を見て、イタリアにはサッカー文化が根付いていると感じました。
【写真3 体格が全然違ったイタリア遠征】
マリーシア(malicia)が足りない?
サッカーには、ずる賢い、という意味のポルトガル語で知られる「マリーシア(malicia)」という言葉があります。日本人は、徹底的に勝利を追求し相手を倒すためのマリーシアが足りない、としばしば言われますが、ヨーロッパで1勝することの難しさを実際に体感して、確かにそうだと思いました。タイでやれると自信を持って挑戦したイタリアでしたが、想像以上に高い壁でした。でも、越えられない壁ではないと思います。世界で勝つには、マリーシアが必要かもしれません。それを日本人が既に持っているもので補うことができたらと、チェゼーナの街を歩き、海を照らす朝日をみながら考えました。試合後に訪ねたミラノ大聖堂は素晴らしく、ヨーロッパ文化を自分の目で見ることができたことも、今回の遠征の大きな収穫でした。
【写真4 チームメイトとミラノ大聖堂で】
Part2へ続く。
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