2020/03/23

2019年度卒業生へ 学部長祝辞:学びを、さらに前に進む力に

本日(2020年3月23日)13時より、LIVE配信のかたちで変則実施されることになった2019年度「卒業式」。 https://www.tku.ac.jp/2020graduate.html

 従来手渡しで授与していた学位記も、今年は全学部、郵送で卒業生のもとへお届けすることになりました。 https://www.tku.ac.jp/graduate_info1.html

ん?上の案内をよく読むと、次のような文言が。

      「※コミュニケーション学部のみ他に追加文書が1枚あります。」

 追加文書って何?
それはもも色の紙、一枚。
桜前線のごとく、じわじわとトケコム卒業生のもとに届いていることでしょう。

柴内康文コミュニケーション学部長より改めて、卒業生への祝辞をご寄稿いただきました。
紙一枚の舞台裏についても触れられています。
スピーチに代わる餞のことばを、ここにお届けします。




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みなさん、卒業おめでとうございます。私も卒業式特設サイトなど何度か(今年は、述べて、ではなく)書いていますが、うれしいことは何度打ち込んでもよいものです。

ただ、そういう場ではあまり書かなかったことにも少し触れたいと思います。卒業式、また学部の学位記授与を行うことができなかったことについてです。それについて触れると、どうしても「残念」や「申し訳ない」などの言葉がついてきてしまいます。しかし今回の出来事もこんな言葉も、みなさんが成し遂げた成果や、この晴れがましい門出に本質的には関係のないことでしょう。そのような表現を、みなさんに向けられたメッセージに載せる気にどうにもなれなかったのです。

振り返ると、みなさんの多くは中学1〜2年生のころに、2011年3月11日を経験しています。年度末・年度初の締めくくりそしてスタートである時期に、再びこのような社会的動揺に遭遇したみなさんのことを思います。前回のときも、これから世の中はどうなるのだろうか、自分たちの未来は、などといろいろと不安に感じたかもしれません。しかし、それをたくましく乗り越えてみなさんはいまここにいます。そして今回は、みなさんがこれまで、そして大学の勉学を通じて身につけた能力があるはずです。いま社会で起こっていること、例えば買いだめの行列はなぜ起こるのか、活動を続けるのか中止するのか議論するときに起こる集団心理現象、効果的なリスクコミュニケーションのあり方、このような事態でのマスメディアやソーシャルメディアの役割、あらためて浮かび上がる文化や芸術の意味、世界規模で起こっている人々の移動およびその喪失がもたらすもの…。

みなさんには、このような事象を冷静に見つめ、自分が、社会がどうすればよいのかを考える能力がいまでは備わっているのではないでしょうか。少なくとも私は、みなさんにその能力があることの証明として、手元に届けられた学位記に自分の名前を記したのだと思っています。ちなみに「コミュニケーション」という単語には、(人々のつながりによって起こる)「伝染」という意味もあるのです。コミュニケーションの特性をよく知るみなさんには、このことも何よりも腑に落ちることでしょう。

今回のことも、みなさんがさらにたくましく成長するための学びと実践の場にもしてもらえたらと思います。一人一人の人生には、これからもさまざまなことが起こります。なぜ自分にこのタイミングにこんなことが、ということが、何度も、です。しかしみなさんの経験が、ほかのどの世代にもまして、困難を乗り越える力を与えてくれていると信じます

最後に余談を。学位記をお送りした封筒には、ピンクの紙が一枚入っているはずです。コミュニケーション学部の学位記授与の会場では、優秀卒業制作・卒業論文賞、および最優秀賞の表彰を行っています。今回、それができなくなってしまったので、発表と表彰の場を設けなければ、と思いました。学部長と教務主任で相談し、学位記を送付することになるのでそこに紙を一枚挟み込ませてもらって発表の場とすることにしました(受賞のみなさん、あらためておめでとうございます)。そしてそれを挟み込むなら、きっと紙面のスペースが余ります。先生方に急いで声をかけ、寄せてもらえたメッセージもそこには掲載できるかな、と考えたのでした。学位記授与の会場では例年、立ち会った教員がマイクを回して一言ずつ(まあ、たいていはそれ以上)スピーチする慣習も学部にはあるのです。しかし大学はいつにもまして閑散としています。そこでオンライン上に先生方の名前を入れたスプレッドシートを作って共有モードにし、学位記の発送準備まで日がありませんが間に合う方は書き込んでください、とメールでお願いしました。いわば話題のリモートワーク・テレワークのミニ版でしょうか、ほかの人のものもきっと眺めながらのバラエティに富んだメッセージ入力はスムーズに進み(スピーチだって、前にしゃべった人の内容で話を変えるものです)、発送前のわずかな時間で学部からお送りする手紙が仕上がりました。メールに添付された素っ気ない白黒のPDFを見て、桜の季節ですからと色つきの用紙を選んで印刷し、また封入作業をしてくださったのは事務室の方々です。なお共有ファイルの更新履歴からは、一度書いても何度か推敲された先生も多いようですよ。みなさんを思い、その門出を祝っている人々のことも心に留め、落ち着いたときにはキャンパスにも顔を出してもらえたら、と願っています。

どうか胸を張り、力強くまたしなやかに前に進んでください。本学のモットーは「進一層」(Forward Forever)です。いまこそそれが問われる時代です。本日、みなさんを社会に送り出せることを誇りに思います。

2020年3月23日

コミュニケーション学部長 柴内康文
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