この4月から柴内康文さんの後を引き継いで、 新しく学部長を務めることになりました、山田晴通です。 在学生の皆さんのほとんどは、 私の授業を受けたことがあると思いますが、新1年生の皆さんは、 2分の1強の確率で私の授業を履修必修で受けることになるはずで す。これまでに授業でご縁のあった皆さんも、 これからご縁のある新1年生の皆さんも、そうではない皆さんも、 どうぞよろしくお願いいたします。
新学部長として、新学年度の開始にあたってのメッセージを、 皆さんに送ります。ちょっと長めになりますが、 最後まで読んでもらえるとありがたいと思います。 4月1日付で公開しますが、もちろんジョークではありませんよ。
コミュニケーション学部は、今年2020年で開設から25年、 四半世紀の歴史を重ねたことになります。この春は、新型コロナ・ ウィルスの問題で、学校の一斉休校があったり、 様々な行事が影響を受けて中止・延期されたりと、 私たちの社会が感染症という危機にさらされ「国難」 と呼ばれるような状況が生じています。残念ながらこの春は、 卒業式、入学式をはじめ、様々な行事が中止されたり、 変則的な形態での実施を余儀なくされています。 学生の皆さんにとっても、 例えば2011年の東日本大震災のときに匹敵するような非常事態 、平穏な日常生活が何かに脅かされ、 萎縮することを強いられる窮屈な状況が、 生々しく感じられているのではないかと思います。
実は、コミュニケーション学部が開設された1995年の春も、 やはり重苦しい雰囲気が日本の社会を覆っていました。この年、 1月17日に兵庫県南部地震が発生し、 5千人以上の犠牲者を出した阪神・ 淡路大震災が引き起こされました。そして3月20日には、 地下鉄サリン事件が起き、 世間の注目が当時のオウム真理教に集まって、 メディアは連日その動静を取り上げ続けました。 5月16日には教祖・麻原彰晃の逮捕に至り、 その後も長くこの事件に関する報道は続き、また、 このような集団を生み出した社会の在り方を巡って重々しい議論が 様々な形で交わされました。当時は、その少し前から「 1999年に世界が破滅する」という「ノストラダムスの予言」 という形に象徴される世紀末思想、 ある種の末法思想も広まっており、「(第二次)オカルト・ ブーム」とも称される時代の雰囲気もありました。 最初のうちはあくまでも冗談として、 半信半疑で楽しむという余裕があったはずが、1995年春には、 シャレにならない形で「終末」 が現実の中に噴出してきたという感覚が広まったのです。
そんな時代の中で、コミュニケーション学部は開設されました。 人と人を結ぶコミュニケーションが、社会の結びつき、 紐帯を生み出す原点です。コミュニケーションは、社会を作り、 文明を生み、 文化を育んで豊かな生活を送るべく努力する人間の営みの出発点に あるのです。その本質は、 身の回りの身近な人々との接触におけるコミュニケーションから、 メディアを通した社会の広がりにおける大規模な情報交流までを、 連続性のあるひとつながりの過程なのです。 コミュニケーションを学ぶ目的は、 あらゆる規模や形態におけるコミュニケーションの本質を理解し、 適切に情報交流をおこなうことで、 様々な社会のつながりをより円滑に機能させられる能力を身につけ るところにあります。
1995年は、一方では、「インターネット」 という言葉が日本語で一般化し始めた最初の一歩の年でもありまし た。この言葉自体はそれ以前にもあったのですが、 新聞や雑誌など一般的なメディアに「インターネット」 という言葉が多数登場するようになったのは、 1995年からでした。当時は、 すでに携帯電話は存在していましたが、今とは機能も、 料金なども全く別物で、学生は到底持てないものでした。それが、 10年ほどで、学生がみんな携帯電話を持っている状況となり、 さらに電話でなくもっぱら通信機器、 情報処理端末としてのケータイが活用されるようになってきたわけ です。
いくら技術が変化しても、人間の心は変わらない、 というのは一面では真実ですが、ケータイがある現代と、 例えば皆さんのご両親や、さらに上の世代の先輩たちが、 いまの皆さんのような若者だった時代に、 どうやって友人や恋人と連絡を取り合っていたのか考えてみてくだ さい。技術が変化すれば、人と人の接し方は変わっていきます。 接し方が変われば、人間の心も変わるかもしれませんね。
コミュニケーション学部は、 デジタル化の爆発的な展開という技術的変化の荒波の中で、 メディア・リテラシー教育を通して情報の本質を見極め、 コミュニケーションについて自らの力で考えられる卒業生たちを、 社会に送り出してきました。学部開設から四半世紀を経て、 教育の具体的な内容は技術の変化や社会の変化を反映して常に更新 を重ね、変化してきましたが、コミュニケーションを原点に、 社会の絆のあり方の本質から考え、より深く社会を理解し、 その先で自ら実践するという方向性は、 コミュニケーション学部における学びを貫いています。
私たち教職員は、学生の皆さんの学びの努力、前進への意欲、「 進一層」の精神を、全力でサポートします。窮屈な「空気」 が広がろうとするときこそ、身近なところから本質を捉え直し、 しっかりと視線を上げて、前に進んでいきましょう。
2020年4月1日
コミュニケーション学部 学部長 山田晴通
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