2019/11/14

「いいね!」に縛られない SNSとの付き合い方  【対談:佐々木教授×モデル・ラブリ氏】

「佐々木先生が、モデルと対談したらしい?!」

そんな噂を聞きつけ、件の対談が掲載された雑誌を手に取りました。

フランスのモード誌『Numéro』の日本版として2007年に創刊された国際志向のファッション誌で、ウィキペディアによれば、「中心読者層は世界中の流行に敏感な25歳から35歳のキャリアウーマン」。(年齢のみそこに該当する)私はおそらく(というのも、たまに行く美容院で触れたかどうかうる覚え)、初めて頁をめくりました。





なるほど、今号の特集は「いいね!がつなぐ未来」。SNSは未知の世界、想像以上の未来につながる可能性を与えてくれるけど、それは使い方次第。弊害も多いよね、というメッセージと問題意識がタイトルから伝わります。私たちはSNSとどう付き合うべきか?を議論するラインナップに、昨年『ソーシャルメディア四半世紀』を上梓されたトケコム教員の佐々木先生が登場するというわけです。

対談相手はモデル、タレントのラブリ氏。数十万のフォロワーを持つInstagramやTwitterで積極的に発信し、今年、SNSをテーマにした個展「"デジタル”と“私”の関係 どうやら私は数字らしい」を開催するなど、SNSなるものを、メタレベルで考察し実践する表現者です。Forbes JAPANが選ぶトップインフルエンサー50」にも選出されました。





対談のタイトルは「SNSとの付き合い方って?」(118−119頁)。
ラブリさんの語るSNS経験と、そこから導き出した「マイルール」に佐々木先生がコメントする流れで進む対談はコンパクトながら示唆に富み、日々SNSと付き合っているだろう学生の皆さんにも、ぜひ読んでもらいたい内容です。対談の末尾にまとめられたお二人の「マイルール」を引用します。

【ラブリさんのSNSルール】
1. SNSを自分の価値観の中心にしない
2. フォローは最低限に抑え、不要な情報源を整理する
3. 生身の人との交流を通してより良い情報収集を積極的に行う
4. SNSで発信するときは、伝えたい対象者について考える 
【佐々木先生のSNSルール】
1. すぐ手に取ってしまうスマホは、あえてすぐに手の届かないところにおく
2. 情報収集型かコミュニケーション型のSNSユーザーなのか自覚する
3. 情報の偏りを認識し、別の角度から物事を見つめる習慣を持つ
4. 実世界での体験を大切に。それを助ける道具としてスマホもSNSも使う

雑誌の特集では、対談した二人以外にも複数のオピニオンリーダー(インフルエンサーというべきか?)がSNSとの付き合い方について語っています。いいね!の数に振り回されず、SNSを創造的な未来へのツールとして使うためのポイントとして多くの人が語っているのは、「自分は何のためにSNSを使うのか」その目的を意識するべきということ。一方で、同じSNSでも、PCやタブレットで使用するのか、スマートフォンで触れるのかではその行為の意味や展開が異なってくるという、「メディアの違い」に踏み込んでいるのは佐々木先生だけでした。私もこの点が、何より重要だと思います。

本特集を担当した編集長の田中杏子氏は、巻頭の編集後記でこうコメントしています。

今号を通して気づいたことは、SNSを使う目的がクリアであるかどうか。SNSを主軸ではなくツールとして存在させ、その先には実際のフィジカルな行動や出会いにつなげられればさらに素晴らしいものになるということ。(20頁)

それは言い換えれば、「一旦、スマホを置いて」。「いま」に束縛され続けるスマホでの絶え間なき情報接触では、「未来」を想像・創造する余白がない。「過去」に向き合う余裕も生まれないでしょう。自分とて、気をつけないと。

私が後期に担当している「ジャーナリズム論」でも、「未来をつくるジャーナリズム」を主軸テーマとしています。久しぶりにファッション雑誌をパラパラとめくりながらヒントももらい、「知る喜び」に満ちた読書体験でした。佐々木先生、ありがとうございました。


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